「俺、待つよ。悠哉のこと忘れられるまで」
「……待ってもらっても、桐野のことを恋愛対象にみるなんて無理だよ」
希望をもたせちゃいけないって思う。
あたしが桐野に甘えて、桐野に期待させたくない。
あたしが桐野の立場だったら甘えられたら期待してしまうってわかるから。
「……はあー」
張り詰めた空気の中、桐野が大きな息を吐く。
「だめだったかあー」
頭をガシガシかいて、明るく笑う桐野は、きっとあたしに気をつかってくれてる。
「悠哉に告白するの?」
「あー……うん。言えるか、わかんないけど。勇気、出してみたいと思ってる」
「そっか……。がんばって」
「うん。ありがとう」
「俺の方がいい男なのに」
冗談みたいにいう桐野につられてあたしも笑ってしまう。
たぶんほとんどの女子が桐野の方がいいっていうような気はあたしもしてる。
「物好きだなー高坂は」
「それはそうかも」
肩をすくめたあたしをみて、桐野が考え込むように少し黙った。
そして不意に、あたしの腕を引っ張った。
ーーえ!?
抵抗することもできず、あたしは桐野の腕の中におさまった。
突拍子もない行動に動揺も隠せず、押し返そうとするが力が強くておし返せない。
ちょっとまって!
なにこれなにこれ!
「き、きりの?」
「少しだけ。ごめん。このままじっとしてて」
えええええ!
少しだけとか困る!!
桐野の顔もみられず、足元をただ見つめてしまう。
心臓がうるさくなるけど、桐野の鼓動も同じくらい速かった。
ふわりと香る柔軟剤の香りが距離の近さを物語るようであたしは目眩がしそうだ。



