タッタッと駆ける音が聞こえて、ドキドキと心臓が鳴る。
桐野の姿が見えて、あたしに気づいた桐野も花が開いたように笑う。
「お待たせ」
「う、うん」
思わずその笑顔に圧倒されてしまいつつ、あたしは桐野と向かい合う。
「緊張した顔してる」
あたしの顔を見て笑いながら桐野がそういった。
「え、そうかな?」
「うん。話って告白の返事?」
図星をさされて、あたしは小さく頷いた。
「ごめんなさい」
ぎゅっとスカートの裾を握りしめて、ゆっくりと頭を下げた。
「桐野とは、付き合えません」
顔を上げると、桐野は動揺もしてなくて涼しげな顔をしていた。
「桐野の気持ちはすごく嬉しかった。こんなあたしを好きって言ってくれて、ドキドキした。ちゃんと考えてみたよ、桐野のこと」
「うん」
「でも何度考えたって、あたしの答えは同じだった」
桐野から目を離さず、あたしは自分の想いを素直に紡ぐ。
「あたしは、やっぱり藤崎が好き」
初めて、だれかにはっきりと伝えた言葉だった。
その言葉を口にするだけで、気持ちが強くなる気すらする。
「今はほかのだれかと付き合うなんて考えられないよ」
たとえ、藤崎があたしを好きじゃなくても。
あたしの気持ちは変わらなかった。
桐野に告白されて、桐野との未来を考えてみたけど。
あたしの脳内には何も浮かばなかった。
例えばデートとか、手を繋ぐ、とかキス、とか。
今のあたしの未来に、桐野と歩む道がなかったの。



