にこにこと笑顔の監督さん
こわい。
さっきあんなに部員たちに怒鳴ってたのに。
1年の部員達ももうしっかりと練習に参加していて、
同じクラスの何人かの顔も見えた
監督さんが私たちの目の前でピタリと足を止め

「君達がマネージャー希望か?
やー嬉しいなぁこんなにきてくれて
これもつむぎのおかげか!!!」

と言って豪快に笑う
引きつった笑みを浮かべる4人を置き去りに、
監督さんはまた話し始める

「俺は月城すぐるだ
マネージャー希望ならもっとこっちに近づいて見なさい
あ、ボールには気をつけて」

と言ったあともなお、話し続ける
この代はねー、すごい期待できるんだぞ
これなら甲子園優勝も夢じゃないな
とかなんとか言ってるけど、
そんなこと私の耳には入っていない
すっっっごい!かっこいい!!
なんて素人でも思いつくような感想を頭の中で考えていると、ほとんど何もせずに今日の部活は終了

部員は整備にはいり、つむぎさんもようやく暇ができたみたいでこっちへと向かってきた
あとはつむぎに任せるよ
と言った監督さんが思い出したように
こちらを振り返った

「あ、あと野球部は部内恋愛禁止だから
そこはよろしく」

と、笑みを浮かべてはいるものの
目の奥は笑っていない

「は、はいぃ!」

と4人で大きな返事
それよりまだ6時すぎだけど、
もう練習終わりなのかな?
と考えていると、

「今日は練習これで終わりね
いつもは8時30分までだけど、
部活見学の時間に合わせて今日はここまで
全然教えてあげられなくてごめんね
明日はもっと時間あると思うから、
少しずつ部活ぽくなると思う!」

なんて申し訳なさそうに言うつむぎさんに

「そんなことないです!!!」

と4人全力で頭を振りながら、
体験入部の紙を差し出した

するとつむぎさんは少し困ったように

「もう決めちゃっていいの?
これ提出まであと一週間以上あるけど」

って
私にとってはどれも苦になるようなことじゃない

そんな固い意思を持ちながら、

「はいっ!」

って、誰よりもいい返事をしたんだ