不思議な人だった。

「ねぇ、隣、いい?」

「………あ、いいけど」

話したこともないのに俺の隣にやってきて、その日から当たり前にそいつが横にいた。


ある日はチョコを持ってきて…

「これね、美味しいんだよ〜?」

「甘いの苦手なんだけど…」

「いーから食べてよ!」

そう言って口に押し込んできた。

「むがっ」

「……………」

「………どう?」

(何、期待してんだよ…)

「…おいしい」

「ほんとっ!?」

「………ほんとだよ」

(…嘘)

なんで嘘なんか言ったのか。

やったー!なんて言ってるけど普通に…

「…甘っ(ボソッ)」

久しぶりに食べたからかあの時のチョコはすごく甘く感じた。


いつしか大事な存在になっていたそいつ。

多分、一目惚れだった。

可愛いのを自覚していて、なのに褒めたら照れる。

まぁ、かわいいなんて数えるほどしか言ったことないけど。

もっと、言ってやればよかったかな…


『ピ………ピ………ピ………』

聞こえるのはさっきまでそいつからもしていた音。

そいつはもうここにはいない。

長くて綺麗な髪は一年前に全部消えた。

それでも笑顔が絶えないやつだった。

あいつが笑うと嬉しくて、楽しくて、、、好きだった。

もっと、あいつといたかったっ………

将来の夢、お母さんだっけ?

叶えてやりたかった、あいつの望みなら、なんだって…っ!

君さえいればそれでよかった、真奈。