ルピナスは荒れ狂う。荒れた地獄のように。こんなルピナスを見たのは初めてだ。魔界にいる時はいつも穏やかで、さっきまでも。荒れる感情とは無縁の女なのだと思っていた。しかし今は――。

「巻き戻る前の、魔界にいたルピナスには本当に申し訳ないと心から思っている。そしてそなたが十八となるその時まで、あの時とは違う、変わった我をみてほしい」

 ルピナスは冷めた目をしていた。

 もう駄目か。
 やはり結ばれぬ、今回もルピナスとは離れる運命なのか――。

「本当に花は嫌……ではなくて、苦手なんだ。花を見ていると特に目に痒みが、時には全身もムズ痒くイライラしてきて……」

 冷たい目をして我を見ていたルピナスの表情が急に、はっとした表情に変わる。

「それって、もしかして……あなたの症状は、人界でいう『花粉症』なのかもしれません」

 冷静になったルピナスは言った。

「なんだそれは?」

「……もう、ヴェルゼ様、酷いです。話を訊かずにわたくしをモフモフに変え、しかも攻撃なさろうと……わたくしがヴェルゼ様をお裏切りになるわけがないじゃないですか」

 モフモフからいつもの姿に戻ったエアリーがルピナスの話を遮る。

「だまれ、エアリー。今はルピナスの話を聞いておる」
「も、申し訳ございません」