「本当は、悪魔なんかに嫁ぎたくない。なんで私が行かないといけないのでしょうか? 私は優しい人間と結婚して、あんな映像みたいな生活なんかじゃなくて、本当は平和に、幸せに過ごしたいのです。特別なものはいらない。ただ平凡な幸せの中で過ごしてみたかった……」

今まで心の底に閉じ込めていた、誰にも、お母様にさえ言えなかった言葉が溢れ出てきた。もしかしたら魔界では今よりも素敵な人生が送れて、幸せになれるかもしれないと思い込むようにしていた。本当は、魔界は噂通りに人間にとっては最悪な場所だと考えると怖い。映像をみて、更にその思いは深まる。

 頭の中に流れた映像は、時間が巻き戻る前に実際起こった出来事で、今生きている私に起こったわけではない。けれどまるでリアルに体験したような感覚になってきた。映像での出来事が私の心に突き刺さり、今の心の痛さと映像の中にいた私の心の痛さが同化する。