ヴェルゼの魔力のお陰なのか、すんなりと小屋は出来上がった。花も固くなり、風が来ても雨が降っても多分簡単には壊れない。

「す、すごい」

 そう言いながら私は暖簾をくぐる。ヴェルゼとエアリーも中に入ってきた。

「い、いいぞ。いい小屋だ」
「ありがとうございます」

 お礼を言った瞬間、ヴェルゼはくしゃみをした。悪魔も風邪を引いたりするのか。

「なんと、ヴェルゼ様が、ルピナス様の考えた小屋をお褒めになっていらっしゃる……信じられない」
「黙れエアリー」
 ヴェルゼはエアリーをキッと睨む。
「申し訳ございません。あ、そういえば人間が食すお食事の準備はございません」
「でも、もう少しすれば帰りますし、家に食事が……」
「いいえ、今日からはここでお暮らしになるのです」
「お母様にはお伝えしていないから、心配させてしまいます」
「大丈夫でございます。お母様には、花嫁修業のためにしばらくルピナス様をお預かりいたしますと伝えてありますので。あと、これをお受け取りくださいませ」

 エアリーから黄色の鈴を受け取った。

「これは何です?」
「お母様のことをご心配になるお気持ちもあると思いまして。こちらはルピナス様とお母様がお持ちになる、ふたつセットの鈴で、身の危険がどちらかに迫るか、片方が強く振れば、もう片方の鈴が騒ぎ出します。例えばこのように」

 勝手に鈴が大きく揺れだし、シャンシャンと音も大きくなりだした。

「じゃあ、これが鳴らない限り大丈夫だってことですか?」
「そうだ。そなたの母親に危険が迫れば、我は一瞬でそなたの母親の元に行き、助けよう。まぁそんなことは決して起こらないよう、我が後でそなたの姉達に……」
 
 ヴェルゼはニヤリと含み笑いをした。

 多分、この悪魔達は嘘をつかないし、信用出来るだろう。

「ありがとうございます」