友達が告げたその意味に、藍の瞳が大きく見開かれた。



数日後、昼休みに藍は美術室に向かった。扉を開けた先にあったのは、壁に飾られた美術部の描いた絵と理沙がいた。理沙はこちらに気が付くと、顔を顰める。

「やっぱり絵が好きなんだね」

藍がそう微笑むと理沙は顔を逸らし、「別に……」と呟く。しかし一瞬見えた瞳は潤んでいるように見えた。藍は一歩前に出て言った。

「ずっと苦しんでいたんだね」

理沙は答えない。藍は友達から聞いた話を思い出す。目の前にいる彼女は、好きなことをすることすら許されていない。

理沙の家は代々名門大学を卒業し、一流企業などに就職することが当たり前となっている。落合家の一人娘である理沙は両親や祖父母に期待され、幼い頃から勉強ばかりの日々だった。

「中学生の頃、美術部に入って絵を描くことに出会ったんだよね。コンクールで入賞したこともある。でも家族に「絵なんて役に立たない」って言われて、美術部に入部するのを諦めたんだよね」