慎重にコミュニケーションを取らないと週刊誌などで噂されては面倒だ。その点も後で政也に聞いてみるとするか。

女性関係には詳しそうだからな。


政也の案内で使用するロッカーの場所やスタジオ、お世話になるスタッフさんや共演者への挨拶の仕方などを学び、あっという間に顔合わせの時間となった。


日奈森 莉津(ひなもり りつ)役、小坂 まどかです。よろしくお願いします」


モデル業をやっているだけあって身長は同年代の女子よりやや高め。ブラウンのストレートヘア、早い時間にも関わずメイクもしっかりしている。

声も大人びていて最初に挨拶をした時に、一瞬年上と間違えそうになった。


新井 陽向(あらい ひなた)役の白石 政也です。よろしくお願いします」


堂々とした挨拶。キャリアが長いだけあって1番この場に馴染んでいる。


次は俺の番。人前で自己紹介は得意ではないが、これは仕事だ。そんなこといちいち言っている暇はない。


西村 颯(にしむら はやて)役を務めます。神尾 湊月です。よろしくお願いします」


なんとか噛まずに言いきれた。


言い終わる度に拍手が鳴るはあまり得意ではなく、気恥しいさを感じる。


「緊張してますね。声、震えてましたよ?」


コソッと耳元で政也が言った。1番言って欲しくないことを言われてそれには大人気なく無視してしまった。