電車を乗り継いで30分。大手企業のテレビスタジオへとたどり着いた。今日は役者の顔合わせと本読みがメインの予定。

メイクや衣装合わせなどの細かい打ち合わせも今日のうちに行われる。


「あ、おはようございます湊月さん。早いですね」

「お、おはようございます。白石さんも早いですね。役者はやはりこのくらいが普通なんですか?」

「基本早く来るのが業界の決まりみたいなもんかな。それと俺のことは“政也”でいいですよ。湊月さんの方が年上なんだから」

「そういうものなのか?…じゃあ、政也」

「はい、湊月さん」


お前は前から俺のこと呼び捨てだったが、その説明ないのか?特に気にしていなかったが、自分のことを呼び捨てで呼ばれると徐々に気になってきたな。


「難しい顔してどうしたんですか?あっ!もしかして、緊張してます?そうですよね、なんせ、主演の女優があの小坂 まどか(こさか)さんですから気になるの分かります」

「いや、特に主演の女優のことはあまり気になっていない」


仕事上の付き合いは仕方ないことだけど、恋人がいるからあまり親しくは出来ない。だけど小坂さんは読者モデルにタレント業、さらには女優業の仕事をこなす有名人。年は確か、政也と同じ高校2年生だったな。