「“好きだよ"」

「え?それはさっき聞いた…よ…?」


え?


振り向いたら湊月くんの顔がわたしの一番近くにあって、一瞬、頬に柔らかいものが当たった。


「今のは夢への気持ち。ありがとう。おかげで掴めた気がする。爽やかな青年が恋をするって設定、俺のキャラじゃないって思っていたけど、どんな俺でも恋をするのは夢って思えば自然と演じることが出来たんだ」

「わたしが…?」


……湊月くんの恋の相手。そっか、うん。


「わたしも、どんな湊月くんでも好きって伝えるし、その分、恋をするよ。だからね、湊月くんもたくさんわたしに恋をして…!」

「約束する。何度でもキミに、夢に恋をするって」


膝を付いてしゃがむと左手を取って薬指にキスをした。まるで誓の印のようだ。


「そろそろ始めまーす。集まってくださーい!」


あ…時間か。この時間が一生続けばいいのに。湊月くんともっと居たかった。ううん、わがままは後で2人っきりになった時のために取っておこう。

今は目の前のことを頑張っている湊月くんを応援するのかわたしの役目だから。


「行ってくる。見ててね、夢」

「うん。頑張ってね湊月くん」


全力で両手を振って送り出した。さっきまで沈んでいた顔がもとの湊月くんに戻っていた。

今なら大丈夫。どんな事でもやり遂げられるよ。だから、頑張って。わたしはいつでも待っているから。