湊月くんの甘い溺愛に困っています

「そうだね。うん、やってみるよ」


少し元気が出たのか、疲れが出ていた顔が明るくなってきた。


「それじゃあ、やってみよう。わたしここに立つから」

「うん。…ふぅぅ。よし」


深呼吸をして気持ちを落ち着かせた湊月くんの目付きが変わった。とても真剣で、まるで別人よう。

わたしもつられて身構えてしまった。目の前にいるのは本当にあの湊月くんなのか。

撮影の時は遠かったから表情までは見えなかったから知らなかったけど、こんな表情をしてたんだ。

あ、何か言った方がいいかな?その方が雰囲気出るだろうし。


「あ、えっと……」

「好きだよ」


えっ……?


わたしがセリフを言う前に湊月くんがセリフを言ったから驚いているわけじゃない。

湊月くんが言った“好き”は炭酸のように弾け、夏みかんの香りのように爽やかだった。

さっきまで壁にぶつかっていたのは何だったのか。この一瞬で役を自分のものにした。


「あ…えっ、と……」


言葉が出てこない。その代わりに心臓の大きな鼓動が口から漏れてしまいそうだ。

涼しい風がちょうどいいくらい顔に熱が残っている。目を合わせられない。


「夢」

「……っ」

「ゆーめ。俺の方見て?」


むりむり!こんな顔、湊月くんに見られたら夏みかんに埋まった方がマシ!それが炭酸でシュワシュワに……いや、それは流石にベタベタになりそう。