「白石様、ありがとうございます。でもわたし大丈夫ですから。湊月くんが頑張っている分、わたしも会いたい気持ちを我慢します。約束したんです。完成したら一緒に観に行くって。それまでの短い時間くらい我慢出来なかったら、彼女名乗る資格なんてありません!」


「強いんだな夢は。だけど無理はするなよ。何かあったら俺に言え。なんでも聞くから」


あ……。少しだけ彼の本当の姿が見えた気がした。王子様のような爽やかな笑みではなく、はにかんだ様な笑顔を見せた。

その笑顔はどこにでもいる普通の高校生の男の子のものだった。


「白石様……!ありがとうございます!」

「あのさ、その白石様っていうのはやめて欲しいなぁ。俺らもう打ち解けているんだし。俺のことは政也でいいよ」

「政也、さん…?」

「うん。俺も夢って呼んでいい?」

「はい…!あ、でも学校ではなるべく控えめに」


夢ちゃんって呼ばれている時点で控えめではない気がするけど………。


「分かった、約束する。これからよろしくな夢」

「よろしくお願いします政也さん」


これが初めて政也さんと打ち解けた瞬間だった。握手を交わし、少しだけ彼に近づけた気がする。

彼の仮面が完全に取れる日がきた時はきっと、湊月くんともまた一緒に居られるようになっているといいな。

それまで頑張るよ。どんなに辛くたって涙は流さないから。わたしは湊月くんを信じてるよ。