毎日が憂鬱だ。
何も楽しくないし、何をやっても意味がないと思うようになっていた。
─でも、あなたに出逢えて私が生きている意味がわかったような気がした。

お父さんの転勤で東京に来た私たち家族は今日から新生活が始まった。
だから、今は色々と忙しい。
今は春休み中だから春休みが終われば新しい学校生活が始まる。それと同時に、私は春から"新高校1年生"。
毎日が憂鬱な私にとっては嬉しい気持ちなんて1ミリもない。
瑠薇(るびい)〜、ちょっとそれ運ぶの手伝ってくれない」
「ん、今行くー」
「瑠薇も高校生になるんだからちょっとは愛美(あいび)みたいに新しい学校や道を覚えられるように外に出たらどうなの?」
愛美は私の姉だ。
お姉ちゃんは私の3つ上で春休みが終わったら大学生だ。
お姉ちゃんは私と違ってよく友達と遊びに出掛けたりしていて友達も多い。
お姉ちゃんはタイプで言うと少し可愛い系で普通の人よりは少し細めでモデルのような体型だが、運動神経が抜群で頭もそこそこいい。
それに比べて私は中学1年生の頃から愛想が悪くなり面倒くさがり屋になってしまった。
でも、オシャレには興味はあるしメイクだってする時はある。雑誌を見たり美味しいものや好きなものを自由に食べる時だってある。目だって二重だし自分で言うのもなんだが肌も綺麗な方だ。
でも、私は暗いよりで可愛くはない。
タイプで言うとクールよりかもしれない。
「ん、じゃあちょっと出てくるよ」
「暗くなる前には戻ってきなさい」
「ん」
そう言って私は家を出た。
友達や家族とよく新幹線で東京にお出掛けしに来たこともあったから見慣れている。
私は散歩がてらに人気の少ない所に行った。
ちょうど座れそうな木のベンチがあったからそこに腰をおろす。
高積雲や巻積雲が空全体にもくもくと広がっていて、まるで綿飴みたいだ。

少し休憩したから他のところも行ってみようかなって久々に気分が上がっていた。
ベンチから起き上がって後ろに振り向いた瞬間男の人とぶつかってしまった。
「痛った、、、」
「あ、すいませんっ、大丈夫ですか? 前を見てなくてごめんなさい。」
「全然大丈夫です。私の方こそすいません」
ぶつかって尻もちを着いた私を起こしてくれ自分のことは後回しで私を心配をしてくれた。
その人は帽子とマスクをしていて顔がよく見えなかったけど声からしていい人そうだなと思った。
「ほんとに大丈夫ですか? 手が赤くなってますけど」
そう言われ手を見たら少し赤く、血が出ていた。
こんなの帰って洗えば済む話だから大丈夫だと言ったのに男の人はまだ心配そうに私の手を見ていた。
「それより大丈夫ですか? あなたもスマホにちょっとヒビが入ってるし手が赤くなってますけど」
「わ、ホントだ。」
ポケットの中に絆創膏がないか手を突っ込んだら奇跡的に1枚入っていたから彼の手をとり、近くにあった蛇口で砂やちっちゃい石などを流し絆創膏を貼り終えたあと彼は申し訳なさそうに謝ってきて、お礼に何かできないかと私に言ってきたもんで私は慣れない顔で笑顔を作りながら「じゃあ、、、名前。あなたの名前を教えてください。それでまた会った時にお礼をしてください」って言ったら「琉弥(りゅうや)」と口を開いた。
「七瀬琉弥。」
「琉弥、、、さん。いい名前ですね。どう言う字を書くんですか?」
ちょうど、長い木の棒があったからそれを使って琉弥さんは地面に自分の名前を書き始めた。
「りゅうはこっちの龍じゃなくてこっちの"琉"。で、やは弥生時代の"弥"」
「あ〜、そう言う字を書くんですね」
「君の、名前は?」
突然、書かれてフリーズしてしまった。
「あ、私の名前、私は砂東瑠薇。苗字はこっちの佐藤じゃなくてこっちの"砂東"。で、瑠薇は瑠璃色の"瑠"で(ぜんまい)と書いて"瑠薇"」
「へ〜、結構難しいね。瑠薇って呼んでもいい?」
「ん、どうぞ」
そんな話をしながら色んなことを話した。琉弥でいいと言われたが彼は私よりも年上でアイドルだということがわかった。
だから人が多いところには仕事以外変装して行くらしく、今日はオフで散歩がてらに人気の少ない所を探していたということだった。
“アイドル”ということもあり私は彼を"琉くん"と呼ぶことにした。
でも2人だけの時は普通に"琉弥"と年齢は関係なく呼ばせてもらった。
私は彼と話していると落ち着いて今までの友達と話しているより楽しかった。
それからほぼ毎日、私はあのベンチに行くのが週間になっていき毎日外に出ていることに気づいたお母さんとお姉ちゃんは嬉しそうな顔をしていたのを私は気づいていた。
2人だけでいるベンチではいつものようにプライベートの話や琉弥の仕事の話、私の話なども話して時間を潰していた。
アイドルと言うこともあるからあまり長くはいられない。
ある日、琉弥といつものように雑談をしていたら「最近、、、」と遠慮がちに言ってきたので頭の上にハテナを浮かべ首を傾げて「何?」と聞いてみた。
「最近さ、何かあった?なんかいつも無理して笑顔作ってるように見えるけど、、、」
思わぬことを言われ動揺してしまった。
それに気づかれないように必死に笑顔を作り「そんなことな」
「ほら、その顔」
私の言葉を遮り、今までに見た事のないような顔をして言われた。
「何かあるなら言ってよ。なんでも聞くよ、 ね?無理しなくていいから我慢したら余計に辛くなるだけだから」
そんなことを言われても"過去"のことは言えない。いや、言っちゃ行けないんだ。
─でも
「ほら、泣いてるじゃん」
「え、?」
私の目から涙が自然と溢れてきてしまっていた。
「無理しなくていいんだよ」
そう言われ、強く抱き締められた。
その瞬間、大粒の涙が溢れて私は小さい子のように声を上げて泣いた。
琉弥は私が泣き終わるまで、ずっと抱き締めて背中をさすってくれた。
涙が枯れて落ち着いて来た頃、私は、口を開いた。
「小さい頃はね、活発で元気で明るい方だったの。
でもね、小学校五年生の時に周りからいじめられたりしてたんだ。誰にも言わなかったんだけど、ある日、急にそのいじめがなくなってさ、良かったって思ってたら私じゃなくてずっと仲の良かった1人の友達が敵に回されて今度はその子がいじめられてた。
その前にいじめられてたこともあって恐怖心はあったけど、自分よりその子が大事だったから勇気を出してやめなよって言ったんだけど無視されて助けることが出来なかった。
それで次の日からその子が学校に来なくなって休んでるだけなのかなって思ってた。そしたら、学校の帰り際に知り合いのお母さん達が話してるのを聞いちゃったんだ。『可哀想よね、まだ小学生なのに自殺しちゃうなんて』それを聞いた瞬間絶望したの。
自分が憎くてしょうがなかった。だから私も死のうとしたの。
そしたら、お母さんがリビングで仲の良かったその子から手紙が来てるよって言われてその手紙を読んだの。そこには『ありがと』って『私のことずっと守ろうとしてくれてありがとう。瑠薇のこと守れなくて、ごめんね』って書いてあったの見て泣き崩れちゃったんだ。
それを見たお母さんが私のところに来て「ずっと、気づけなくてごめんね」って。誰かから聞いたんだろうって思った。そりゃあ、噂になるよね。
それから私は外にでなくなった。あれ以来、友達と関わる時は深い関係にならないようにしようとコミニュケーションを少なくした。
それで、中学はみんなと違うところで高校もみんなが行かなそうなところにするために高校を選んでたんだけど、急にお父さんの転勤で東京に来ることになってこの前、初めて琉弥と出逢った。」
言い終わったあと琉弥は少し眉間にしわを寄せて複雑な表情をしてたけど、
─次の瞬間
琉弥は突然私を強く抱き締めた。
さっきよりも強く。
「ごめん、気づけなくて。ごめん、今まで無理させてて」
そんなことを言うからフリーズしてしまう。
「今度、1日休みの日がわかるんだ。春休み中だから瑠薇も暇だろ?良かったら一緒に遊びに出掛けない?嫌だったら全然いいよ」
頭がついていけなくてまたフリーズしてしまったが、私に無理をさせないよにするために言ってくれてるのかなと思い「ん、いいよ」と照れくさくなりながらOKした。
その瞬間、琉弥はいい人だな、とまた思ってしまったこの気持ちは一体なんだろか。
─次の週の土曜日
私は朝早くに目を覚ましてしまったため早めに準備をし始めた。
琉弥に抱き締められた事が頭に残っているのか琉弥のことを何故か意識してしまう自分がいる。
しかも、いつもよりも身だしなみだとか妙に意識してしまい、いつもの自分じゃなくお母さんとお姉ちゃんに「どうしたの?いつもより違う雰囲気だけど」と同じことを言われた。
琉弥とはいつものベンチで待ち合わせをしている。
5分ぐらい早くに着いてしまったのか妙に緊張する。
すると、琉弥の姿が見え手を振っている琉弥に手を振り返した。
「ごめん、遅くなった。」
「ううん、そんなことないよ。私も早く来すぎちゃった。」
「ちょっと早いけど行くか」
私は頷いて琉弥の後ろを歩いた。
琉弥はいつもより少し雰囲気が違う感じがしたのは機能性だろうか、彼はハイネックの服に暗めのチェックコートにジーンズ。
私はアイボリー色のワンピースにチェックコート。
色は違うけどチェックコートが一緒なのがなんか嬉しかった。
季節は春だけど、少し肌寒いからコートは必要だ。
後ろに歩いてたけど、琉弥は私の隣に並んで歩いていた。
「いいの?アイドルってバレたらどうするの?」
「いいよ、そんなの気にしてたら楽しくないだろ?」
“アイドル”ということを一切気にしない彼はとてもかっこよく、輝いて見えた。


─俺は、君に恋をしてしまった。

あの日、君が絆創膏を貼ってくれた日から俺は君に恋をしていた。
君、、、瑠薇は俺よりも結構年下で過去に彼女を苦しめていたことがあり、人と関わることはなるべく避けてきていたらしい。
でも、俺は瑠薇が無理して笑顔を作っていたのに薄々気づいていた。
少し口角が上がっていない時があったり笑い方がおかしい時があったりとしていた時があったからだ。
アイドルをやっている俺は仲間にその事を話した。
そしたらメンバーの1人が「その子って過去になんか嫌なことがあったんじゃない?」そう言い、ほかのメンバーも「あ〜、そうかもね」「ちょっと聞いてみれば?」「無責任かもしれないけど琉弥がその子を救いたいなら寄り添ってみてもいいかもしれないな」と言ってきたから、勇気を出して聞いてみた。あぁ。
やっぱそんな感じか。
瑠薇が話したことに少し予想はしていたが、本当にそうだったとは思いもしなく少し頭が追いつかなかった。
でも、瑠薇には幸せになって欲しくて俺が瑠薇のことを幸せにしてやろうと決め、今日は、瑠薇と遊びに出掛けている。
「行きたいところあるんだ。いい?」
「うん、どこに行くの?」
「んー、内緒っ」
カッコつけてるつもしだけど、正直めちゃくちゃ緊張してるし、まだ肌寒いのに汗が出てきそうだ。
瑠薇に直接"好きだ"なんて言ってない。もちろん瑠薇にこの気持ちが気づかれないように俺なりに頑張っているつもりだ。
最近は、瑠薇の前では出て無いであろう好きという気持ちがメンバーにバレて、よく「前、琉弥が話してた子見てみたいな〜」だとか「琉弥が恋に落ちた相手だ。絶対可愛いだろ」そんなことを言われる時もある。
でもそれは、メンバーだけがいる時だ。
俺はアイドルだからメンバー以外のやつに知られたりしたら瑠薇と会えなくなるかもしれないし迷惑をかけるかもしれない。だから、メンバー以外には秘密にしてある。
そして、今日、、、瑠薇にこの思いを伝えようと思っている。

混乱させるかもしれない。
振られるかもしれない。

だけど、俺は瑠薇が好きだ。
瑠薇とこれからも一緒に居たい。

今日は遊園地だ。
最初は、ゲームをしたり、アトラクションの乗り物に乗ったりした。久々にはしゃいで、瑠薇も楽しそうに「アレやってみたい!」「次あれ乗ろ!」と言ってたくさん楽しんだ。
次は、お昼ご飯タイム。
ちょうど屋台が出てたから瑠薇と一緒に好きなものを選んで美味しく食べた。瑠薇は特に甘いものをたくさん食べ、その中には俺も食べたことがない“イチゴチョコのクレープ”を瑠薇は美味しそうに頬張る。
クレープは見たことはあったが甘すぎるものは食べてくどくなりそうだったからやめていた。でも、美味しそうに頬張る瑠薇を見ていたら俺も食べてみたくなり1口貰おうと考えていたら、ずっと瑠薇の方を見ていた俺に気づき、「琉くんも1口食べる?このイチゴチョコクレープ美味しいよ」と言ってくれたので1口貰った。
「……ん!うまっ!」
「でしょ?この生クリーム、甘くなさ過ぎなくていいよね」
「初めて食べたけど普通に美味いわ」
「ね」
「たこ焼きもあるけど食べる?こっちのたこ焼きはタコがでかくて歯ごたえがすごいよ」
「え、食べたい……ん、ホントだ!美味しい!!」
「だろ?」
昼飯を食べ終え、少し雑談をしていた。
「瑠薇って高いところとか平気?」
「全然平気だよ?」
「良かった。じゃあ次は観覧車だね」
「うん、早く行こ?」
瑠薇といる時間はとても楽しく幸せだった。
だから、観覧車の1番上で告白をしようと思ってる。
そして最後に、観覧車。
「私、観覧車って初めて乗ったんだ。近くで見たことはあったけど、お姉ちゃんが高いところがダメでね。
今日、初めて乗ったんだけど観覧車って落ち着くんだね」
「俺も初めて。遊園地そのものに来たことがなかったから今日は来て良かった」
「でさ、伝えたいことがあるんだけどいい?」
「ん、何?」
「俺さ、初めて会った時にぶつかって俺のことばっか気にして絆創膏を瑠薇が貼ってくれたでしょ?
その時、瑠薇に惹かれたんだ。
前に、瑠薇の過去を知って俺が瑠薇を守りたいって、ずっと一緒に居続けたいって思ったんだ。瑠薇の泣いてる涙が美しく見えた。誰よりも綺麗だって思った。
俺は、ずっと前から瑠薇のことが好きだ。好きで好きでたまらない。
何年でも何十年でも何百年でも待つ。
瑠薇が高校を卒業して仕事に就いてからでも、瑠薇がちゃんとした大人になってからでも全然いいよ。だから─ 考えといてくれないかな」


─私の中では彼が1番の大きな存在になっていったのはいつからだろう。

琉弥と一緒に出掛けた日、観覧車の中で告白、をされた。
初めての出来事で頭が全然追いつかなかった。
フリーズしてしまい、思わず涙が溢れて止まらなかった私に、大きな手で涙を拭ってくれた。
あれから私は琉弥と普通にあのベンチであっている。
「何年でも何十年でも何百年でも待つ。」と言ってくれた彼にいい返事ができるよう、頑張りたい。
彼が私に好きと思いを伝えてくれたことが嬉しくて、毎日のように彼のことを考えていた。

そして春休みは終わり、私は新しい学校で新高校1年生になった。
当然、知らない人ばかりで人としっかり関わることができるか不安だったけど、たくさんの子と仲良くなることが出来た。相変わらず深く関わろうとはしなかったけど、それはそれで良かったと思っている。
毎日が憂鬱で無愛想だった私だったけど、こんな明るくなれたのはきっと、七瀬琉弥に出逢えたからだと今になって思い、ふと彼のことを思い出し"逢いたいな"そう思ってしまった。
琉弥は、変わらずアイドルとして働いていて今では仕事がたくさん増えているなとテレビを観ていて思っている。
テレビで観る彼は普段と違ってしっかりしていてテレビに出れていることがとても嬉しいとメールで話してくれている。
学校では親友と呼べるような関係の友達"槪奈瑠(おおむねなる)"が居る。奈瑠とは趣味が似ていて仲良くなり始めた。その事を琉弥に話したら自分のことのようにすごく喜んでくれて、私自身もとても嬉しかった。
琉弥とも遊びに出掛けることが増え、琉弥のことが今までよりもたくさんのことが知れてなんだか嬉しかった。
それに、奈瑠とも一緒にカフェに行ったり買い物に行ったり遊びに出掛けたりとたくさんのことをしている。そのおかげで、前みたいの辛い思いは少しだけ薄くなっていった。
奈瑠と恋バナをしたり楽しいこと、悲しいこと、馬鹿なこと、ふざけたこと、たくさんのことを話していて私は、毎日が"楽しい"とそう思えたんだ。
それは琉弥も同じだ。このふたりがいたから私は変われたんだ。

私は決心した。
琉弥に、私の気持ちを伝えようと。


─俺は毎日が幸せだ。

瑠薇に、あの観覧車で告白をし気持ちの整理ができるまで待っているつもりだ。
春休みも終わり瑠薇は新しい学校で生活を送っている。メールを交換しているため、仕事の合間や休みの日はほとんど瑠薇とメールで喋っている。その時に、瑠薇は新しい友達がたくさんできたと嬉しそうに話してくれたのが俺にとってはめちゃくちゃ嬉しくて、自分のことのように心の底から喜んだ。
瑠薇に親友と言える友達ができたと言われた時ちょっと不安だったし心配もしたけど、瑠薇が大切だと言うから信じたいと思ったし、瑠薇は毎日が楽しいと言ってくれたのがすごく嬉しくて瑠薇に出逢えて良かったなと今になってはそう思う。
ある日の木曜日、瑠薇にあのベンチに今週の日曜日来れるかと聞かれた。ちょうど日曜日は午後から空いていたからOKをした。
多分、あの観覧車で告白をした返事かなと予想はしている。
不安だけど、瑠薇の気持ちはしっかりと受け止める覚悟で行こうと思っている。


─彼に、私の想いをしっかり伝えたい。

私は、琉弥に自分の想いを伝えようと思い、今週の日曜日の午後にあのベンチで私の気持ちをはっきり伝える。
戸惑うかもしれないし、困らせるかもしれない。でも、あの観覧車で私に告白してくれた彼の気持ちを台無しにはしたくないと強く思った。
そして、約束の日曜日の午後、私はお母さんに友達と少し会ってくるとだけ伝えて家を出た。
あのベンチに行くと琉弥はもう来ていた。
仕事で疲れてるのに申し訳ないなと、彼を遠くから見ていて思ってしまった。
「ごめんね、仕事終わりなのに、、、」
「ううん、全然大丈夫。てか久々に瑠薇に逢えて疲れも吹っ飛んじゃった笑」
「それなら、良かったけど、、、」
「まぁ、座ろ?」
「で、話って?」
「私ね、よく考えてみたんだ。琉弥から告白されたあと、ずっとね。
アイドルっていうことなんて気にしないで私に気を使ってくれるところとか、いつもとちょっと違う雰囲気や服装を見たら"カッコイイな"って思う自分がいて、でも、恋をしたことなんてないしそんな経験なんて1度もしてないからわかんなかったけど、新しい友達がたくさんできたって言った時も自分のことのように喜んでくれて、学校でも時々嬉しいことがあると琉弥に逢いたいなとか、琉弥と一緒にこんなことしてみたいなって思って私、琉弥のことが"好き"なんだなって思ったんだ。
でも、今はまだ付き合えるってわけじゃないの。だから、私が高校を卒業して、大学生になってからでもいいかな?
自分勝って過ぎて嫌な思いをさせるかもしれない。でも、私は琉弥と一緒に居たいんだって思ったんだ。」
「……」
「あ、なんかごめんね。
嫌な気持ちにさせ、っ」
突然琉弥に抱き締められた。
「そんなことないっ。
ありがと、頑張って想いを伝えてくれて。
ありがと、俺のことを好きになってくれて。
待つよ。全然待つよ。瑠薇が大学生になるまでずっと待つ。」
その言葉が嬉しくてつい、涙を流してしまった。
「ほら、また泣いてる。
ほんと、瑠薇は泣き虫だなぁ。
ずっと待つよ。そして、絶対幸せにする。これまで以上に。」
「ありがと。
私の我儘聞いてくれて。」
「我儘なんかじゃないよ。
大学生になったら、俺と付き合ってくれますか?」
涙で濡れた私の頬を優しく拭ってくれた彼に、私は満面の笑みで「はいっ」と答えた。



─3年後

私は無事に高校を卒業した。
奈瑠はここ(東京)で、アパレル店員の仕事をしているそうだ。
私は、特にこれがやりたいという仕事はなかったけど、誰かのためになる、人の役に少しでも立てる仕事をしてみたいと思い看護師の専門大学に通っている。
私が通っている専門学校は3年間で、私は今、1年生だ。
看護師になれるぐらいの頭はあったのでちょうどいいかなと思ってもいた。
高校を卒業し、専門学校は家からあんまり遠くないし歩いて行ける距離だから、まだ一人暮らしはしていない。
でも、専門学校を卒業してからは資格を取ってちゃんとした看護師になるつもりだから、一人暮らしをするための家や家具などをしっかり調べたりしている。
お母さんが早めに準備してた方が区にもならないからと言って、たくさんの資料を私によこしてきた。
一人暮らしをすると決め、家の場所はどこが最もいいのかとか悩んで調べていた時にスマホがなり、画面を覗いたら琉弥からのメールが来ていた。
《仕事で高校の卒業祝い出来なかったから今日とかどう?ちょうどさっき仕事が終わってさ》
〈いいね。 行きたい行きたい!美味しいものとか食べたい!〉
《じゃあ決まりな。30分後にあのベンチで待ち合わせは?》
〈OK〜〉
《じゃあ、また後でな》
〈うん!〉
そして、30分後に私たちはあのベンチで約1ヶ月ぶりに逢った。
琉弥は車の免許を取り、今日はその車で出掛けることになった。
着いたお店は、最近人気で行列になっている高級のレストランだった。
人気ということが料理を食べて見て思う。すごく美味しくて思わず微笑んでしまった。
たくさん食べて少し雑談をしていた頃、私は深呼吸をしてから口を開いた。
「今日はありがと。
3年前にさ、琉弥があのベンチで『大学生になるまで待つよ』って言ってくれたじゃん?」
「あぁ。言ったね。今日はその返事、してくれるの?」
「うん。私、、、多分あのベンチで初めて逢った時から琉弥のこと好きだったかもしれない」
「かもしれないって笑」
「てか、もうめちゃくちゃ好きだよ。だから、、、」
「俺から言わせて?」
「え?」
「俺、初めてあのベンチで瑠薇と逢った時からずっと好きだ。良かったら俺と結婚を前提に付き合ってくれませんか?」
「結婚、もしてくれるの?」
「うん。結婚を前提に」
「はいっ!」
「ありがと、絶対幸せにする。神に誓うよ」
彼はそう言って片付いた机の上で指輪を出し、私の左薬指にはめてくれた。
それと同時にレストラン内が暗くなりサプライズ用のケーキが出てきた。
その瞬間ハッと我に返り、彼に問う。
「琉弥、ここレストランだよ?アイドルってバレたらどうするの?」
「大丈夫。客はみんな、俺のメンバーや俺の先輩・後輩だから。」
「え、嘘、、、」
周りを見たらテレビで見たことあるような人達がたくさん居てフリーズしてしまっていたら色んな人が「おめでとう」や拍手をしてくれていた。

─そして、専門学校も卒業した私は琉弥と結婚し、幸せに暮らしている。
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