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満月の夜。オープンスクエアに向かうと、先輩はネクタイを弛め、服のボタンを少し外していた。月明かりの下で乱れた服の先輩を見て、心臓が脈打つ。
(……かっこいい…というか……)
目線に困る。先輩は
「輝……遅い」
と苦しそうな声で言う。その瞬間、耳としっぽが生え、目が金色に光る。
「……いいかげん、食べさせて……。」
ぐるる、と唸りながら私を見る先輩。私は先輩に近付く。ボタンの外れた制服から、白い肌が見える。ドキドキしてしまう。先輩は私の頬に手を添えると、優しくさするように動かす。そして、首から鎖骨まですっと指を動かした。
「……っ」
衝撃に私は体を跳ねさせる。
背中をなぞられ、びくりとまた体が跳ねる。
「あっ……」
思わず声が漏れると、先輩は
「かわいい」
と呟いた。それにより私は真っ赤になってしまう。先輩も私のこと、可愛いって思ってくれてるの……?特別って思ってくれてるの?このまま、身を委ねてしまいたい。私は確かめたいのだ。この気持ちを。私はいつもはこの辺りで先輩の目を覚まさせるのだが、まだこのふわふわに漂うことにした。先輩は、そのまま私の髪を掬いキスをする。そして太腿の間に足を入れ逃げられなくする。
「ふぇっ」
私は、先輩の行動にドキドキしてしまう。
「輝……」
先輩は私の首筋にキスをする。
「ん……」
もっとこの感覚に溺れていたい。私はそう思ったが、先輩の思いを知らない。今日触れられてわかったんだ。いっそもう今言ってしまおうかとさえ思った。

ー私はやっぱり先輩が好き。

先輩の全てを知りたい。私の全てを知ってほしい。先輩を楽にできる存在でありたい。……先輩に求められたい。

先輩が目を覚ました後、私は涙目で先輩を見つめた。先輩も何か言いたげだった。

「帰りま、しょっか……」
私がそう言うと
「ありがとう、そうだね」
と先輩は乱れた服を直す。先輩にもきっと、さっきの記憶がちょっとあるんだろう。私が受け入れてしまった記憶が。
先輩はどう思っているんだろう。暴走中だからかもしれないけど「かわいい」って言ってくれた。髪にキスをしてくれた。そのどれもに意味が無いなんて思いたくない。先輩はいい人だ。私が嫌がることはしたくないと思っている。……じゃあ、嫌がらなかったら?きっと薄々気付いているんじゃないのかな、私の気持ち。だとしたら、気付いた上で知らないフリをしてる先輩も悪いやつだと思う。