文化祭が始まり、斗真と文化祭を回る。
まず、一番初めにお化け屋敷に入った。
「お化け屋敷いけんの?」
「い、いけるに決まってんじゃんっ、!余裕だよ!余裕!」
しまった。嘘ついちゃった。お化け屋敷ほんとに無理なんだけど……。

「……はぁ、はぁ、はぁ」
「お化け屋敷にそんなにびびる?余裕だって言ってたじゃん」
「ごめんね……」
「きゃーきゃーうるさかったし、しかも俺の腕ひっぱりすぎ」
「ごめんなさい……」
「ちょっと水買って来るから待ってて」
「あ、うん。ありがと」
水買って来てくれるなんて優しすぎだろ。
あぁ、ほんと神。
「ねえ、黒川さん」
「……っは、はい、!」
あ、中野さん……。と、花川さんだ……。
「あのさぁ、すみれが斗真くんのこと好きって知ってて一緒に文化祭回ってる訳?」
「……え?」
「だから、すみれは斗真くんのこと好きだから一緒に回るのやめたらって言ってんの」
あ、そっか。花川さんは斗真のこと好きだったんだよね。じゃあ私なんて邪魔だよね。早く斗真と花川さんを二人きりにしてあげないと。
……でも、何だか花川さんと斗真が一緒に文化祭回ってるの嫌だな……。
こんなの自己中に決まってる。
「別に黒川さん、斗真くんのこと好きじゃないでしょ?」
……私、斗真のことすき、なのかな……。
でも、やたらとドキドキすることがあったような……。
きょうちゃんは、ドキドキするならそれは恋しかないって言ってたよね。
……わたし、斗真のこと好きなんだ……。
好きと実感した途端、私の周りに花が咲いたような気がした。
「……ごめなさい。私も、斗真のこと好きなの……」
やばい。自分で言った言葉なのに、体全体が火傷したように暑い。これが恋?初めてだ。初めての感覚だ。
「……っは!?前は嫌いって言ってたよね?急に何?自己中なんだよっ!」
ドンッ。
近くにあった椅子を中野さんが蹴った。
みんなの視線が私たちに集まる。
……そうだよね。わたし、自己中なんだ。
しょうがないよ。私が全部悪い。
「それ、ほんと?」
……斗真、?
なんでこんなタイミングで……。
「由良、俺の事そんな風に思ってたんだ」
「……違う、!これは、う、嘘で……」
さいあく。嘘ついちゃった。ここでうん好きだよって言ってたら両思いになれたかな。付き合えたかな。そんないい話ないよね。
「ねえ、斗真くん聞いてあげてぇ!黒川さん前まで斗真くんのこと好きじゃないとか言ってたのに、今日いきなりごめん私も斗真のこと好きとか言ってほんとに自己中で最低じゃない!?」
最悪……。
泣きそうきなり、逃げようとする。
「……最低だな」
……やっぱり斗真もそう思うよね……。
あぁ。私最低なんだ。最低で自己中で最悪な女。
「人を否定するような言い方する方が最低だろ」
……え?
「と、斗真くん……?どうしたの、?」
「中野、ほんと最低だな。由良の気持ち分かった上で喋ってんの?中野がやってたことは決して許されることじゃない。ちゃんと分かれよ。由良、行こ」
斗真に手を引かれ、屋上まで来た。
「由良、大丈夫?」
ダメだ。さっきまで我慢してた涙が止まらない。
「……っ、ご、ごめん、なさい……っ」
泣きながらも頑張って謝罪する。
「由良が謝ることないでしょ?」
それに比べて斗真は優しい瞳で私も見つめてくれる。
こんな時にでも、優しい、かっこいいって思ってしまう。
「由良。気持ちが落ち着くまでそばに居てやるから、思う存分泣いていいよ」
「……っぅ。ほ、ほんとに…っ、ごめんね……っ」
「だからもう謝らないで?」
私、涙止まらないかも。
心を読み取ってくれたかのように、斗真は私の背中を優しく撫ぜてくれる。
「……大丈夫。俺は由良の味方だからね」
この人はどこまで優しいんだろう。
優しい言葉をかけられる度に溢れる涙。
この涙は30分たっても止まらなかった。