「それで、どうなったの…?」

「…だんだん暗くなってきて、怖くなってさ…。家に帰りたくなったんだけど、駅の場所にたどり着けなくて。半べそかきながら歩いてたら、お姉さんが『どうしたの?』って。警察に行って親呼ばれて、帰ったら又親に怒られたよ」


私は意外な鳴海の過去に少し笑った。


「それから何かあると、いつもここに来てたから、俺が居ないと母さん、『帰るわよ』って、迎えに来るようになったよ」

「じゃあ、鳴海さんが家でしたら、私が迎えに来るね」


笑顔で言う私に、鳴海は優しくキスをした。


「綾香、これ…」


鳴海はそう言って、私に小さな箱を渡した。

中には指輪が入っていて、指輪には今日の日付が入っていた。


「結婚記念日…。忘れてただろ?」

「……っ」


色々ありすぎて、忘れてた…。

ごめんね、鳴海…。
私が勝手な事をしたばかりに、とんでもない事になっちゃって、私はそれを言えないでいる……。


「帰るか」


鳴海は大きく伸びをすると、私の手を取り、ゆっくりと駅に向かった。

来年はきっと、私が素敵な結婚記念日を演出するからね。



ありがとう、鳴海…。