「ただいま」

「おかえりなさい」


何となく家に帰りづらくて、駅ビルをブラブラしていた私は、帰ると夕飯の時間を回り、鳴海も帰っていた。


「何処に行ってたんだ?」


鳴海の問いかけに、ドキッとした。


「ちょっと買い物」


私は一つだけ買った、ブランド物の鞄を軽く上げて、鳴海に見せる。


「遅いから心配したよ…」

「どれにしようか迷っちゃって…。お祝いの通帳のお金を使っちゃった」


鳴海の顔色を少し伺いながら言う。


「あれは綾香が好きな時に使えばいいから」


鳴海は笑顔で答えた。

私はホッとして食事を済ませる。

その時、私の携帯が鳴った…



公衆電話…。


私は慌てて電話を取る。


「はい」

「さっきはどうも」

「……」

「又、近い内取りに行くからさぁ、お金用意しといてね」


女はそう言うと、又一方的に電話を切った。


「誰?」

「間違い電話」

「ふ~ん…」


私は普通を装うのに必死だった。

こんな時間にまで電話して来るなんて…。
先の事を考えるとゾッとする。

今更、女と会ってお金を渡してしまった事に、



後悔した……。