花森課長、もっと分かりやすく恋してくれませんか?

「花森さんかぁ……面識はないけれど、若いのに随分やり手だって聞いてる」

「ふーん、若いって幾つくらい?」

 課長職につく平均年齢と見た目年齢から算出すると、私よりニ、三歳は上だろうか。

「それは香ちゃんの方が分かるでしょう?」

「興味ないし」

「そう? イケメンって有名だぞ?」

 ビールを差し出し、ウィンクする明さん。どうせ情報源は兄だろう。

「私が面食いなのは認める。だけど、ヘッドハンティングした相手へ妹をあてがうなんて絵に描いた政略結婚じゃない! そういうのは絶対に嫌なの!」

「と言っても、香ちゃんは今フリーなんだよね? 一回くらいお見合いしてみてもいいんじゃないかな? 僕も可愛い君の幸せを願っているんだ」

「なら明さんが私と結婚してくれればいいのに! 明さんなら父も兄も二つ返事で認めてくれる。どう? 私をお嫁さんにしない?」

 そんな提案に明さんはカウンターから顔を寄せーーデコピンをしてきた。

「こら、軽々しく言う事じゃないぞ! いい歳したオッサンをからかうんじゃない」

「……っ、はーい。でも明さんはおっさんじゃない。私にとってもう1人のお兄さんよ」

 弾かれた額を撫でつつ、突っ伏す。

「このまま会社を辞めて、私、どうすればいいんだろう? 仕事しかやってこなかったしなぁ」

「本当に辞めないといけないの? 香ちゃんの技術は認められているんじゃない?」

「それは社長の娘だから! 誰も私個人を見ようとしない、技術者としても女としても」

 弱音でグラスが曇る。

「香ちゃん……」

「ねぇ、明さんの部屋にしばらく泊めてくれない?」

 明さんの困った声にもう一度強請ってみた。建物の二階を自宅として使っているのを知っていて、転がり込む気が満々。昔から明さんは私に弱いのだ。