「宜しい。それでは何て? 何を言ったのです? 復唱して下さい」

 課長は半裸の状態で朝日を浴び、気怠げな独特の色気を放つ。この人に抱かれたんだと夢みたいな一方、身体の節々の痛みが情事の証明をする。

「復唱……そういう細かい所は相変わらずなんですね」

「もう一回戦行きますか? あなたが泣いて許してと言うので引いただけで、私は出来ますよ」

「自分は課長が好きであります!!」

 私は茶化して敬礼をしながら伝えた。要は照れ隠しなのだが、それを許す鬼教官ではないとも承知する。
 悪ふざけごとシーツの海へ放られてしまう。

「躾のし甲斐があり楽しみです」

 身体のあちこちに散らしたキスマークをなぞり、課長が甘く囁く。組み敷かれたならば抵抗せず、彼の首へ手を回す。
 体力面では叶わないが、こちらには有効なカードがあるのだ。

「おねだりしてもいいですか? 私、課長の淹れたコーヒーを飲みたいです。ほら、夜明けのコーヒーってやつですよ」

「……」

「それにもう一度したら出社出来なくなります。困りますよねぇ? 突発的な休暇は避けなければいけないと課長が言いました」

「……」

 ついに言い負かしてやった、心の中でガッツポーズ。ところが課長は悔しがるどころか余裕の表情を浮かべた。

「まさかと思いますが、先手を打ってあるとか?」

「先手という程のものじゃないですが、あなたを抱き潰すであろう予想はしてました。しかしながら、そんな言い逃れを考えつくとは……。
 私は男として退屈させてしまったのでしょう。反省します、コーヒーを飲んで仕切り直します」

 今度は私が無言になる番。