花森課長、もっと分かりやすく恋してくれませんか?



 場所を移しパーティー会場へ。招待客に囲まれる父と兄を遠目に私は食事をする。

「ほらほら、そんなに詰め込むとお腹を壊してしまいますよ?」

 課長がグラスを差し出す。着飾った招待客は花から花へ舞う蝶が如く人脈を辿る中、食い意地全開な私。
 ビュッフェ形式の立食に関わらず、あれもこれもと皿に盛る。

「もぅ、うるさいです。課長は召し上がらないんですか?」

 パクパクと口に運び、ワインを含む。流石有名シェフの料理、幾らでも食べられそうだ。
 でも、課長に指定されたように下っ腹がポッコリ出るかも。

「どうしました?」

「お腹が出たらドレスが似合わなくなってしまいます」

 お腹を撫でつつ躊躇う。
 課長は父達と合流せず、私の側に居るそう。こうして並んでいれば同伴者、パートナーと認識される。
 先程から課長の姿をチラチラ伺う女性達が視界に入っていて、私が隣に居るのをどう感じているのだろう。

「そんな事は気にしなくていいです。仮に妊婦と間違われたら、それはそれで牽制できますし」

「牽制とか言いますが、注目を集めているのは花森課長ですけど。招待客の中にお知り合いも居るんじゃ? 私はここで大人しくしているので挨拶をしてきては如何です?」

 拗ねる訳じゃないが、私と違い課長は見知った相手が居るはず。

「では一緒に行きましょう。元同僚があちらにおりまして」

「……私も行っていいんですか?」

「えぇ、もちろん」

 同僚を紹介して貰える流れに嬉しくなる。

「じゃあ、その前にメイクを直してきても? 少し待っていて下さい」

「え? あっ、待ちなさいーー」

 そうと決まれば食器を置き、返事を待たず化粧室へ足を向けた。

「失礼ですが、宮田香さん?」

 人混みを縫い、目的地があと少しという所で聞き慣れぬ声に呼び止められた。

「そうですけど……」

「あぁ、今日は宮田のお嬢様がいらしているのは本当だったんだ!」