花森課長、もっと分かりやすく恋してくれませんか?

「商魂たくましいですね、見習わなくては」

「もう感心してる場合じゃないですって! 絶対にパーティには出ませんからね」

「着るだけならいいじゃないですか、あっ、そうだ」

 芝居がかった仕草で手を打つ。ますます嫌な予感がする。

「胸元が開いたものは避けましょう」

「誰も私の事なんて見ていないのでは?」

 私の支払いではないのでドレスを買うこと自体はいい。費用は課長ではなく実家へ請求する。でも、誰かを着飾る役目を持ち作り出されたのにクローゼット直行とは忍びなくて。だからと言い、宮田のパーティーなど出席したくないし。

 思考に影が差し込み、顔を上げる。

「首輪」

 トントンと鎖骨辺りをつつく。瞬間、キスマークを付けられた映像が過ぎり、仰け反った。

「課長!」

 踵を鳴らして威嚇するが、マイペースにドレスを吟味している。

「まぁまぁ、そんなに怒らないで。ほら、こちらを試着してみて。私達にあまり時間はありませんよ」

「香ちゃん、試着室はこちらです!!」

 半ば強引に引き摺られていく。私と違い、店長の足取りは軽い。

「上司さん、モデルみたいですねぇ。なんかこうオーラがあるというか。羨ましいです」

「羨ましい? 何処が? あの人は出世欲で私に付き纏っているだけ」

「……そうです? あんな一生懸命、ドレスを選んでくれてるのに?」

 試着室のカーテンを引く間際、課長の様子を観察する。一着、一着掲げては顎に手を添え、真剣な眼差しだ。

 私のドレス程度でムキにならなくても……本当に課長は何を考えているのだろう。

 それから時間ギリギリまで私はファッションショーさながら、何着も袖を通すこととなる。