花森課長、もっと分かりやすく恋してくれませんか?

 宮田の名を出され、びくつく。店内を慎重に見回すと他に何名かお客さんがおり、買い物を楽しんでいる。

「自意識過剰ですよ、香さん。他人が皆、あなたを見ている訳じゃありません」

 課長は立ち位置をさにげなく変え、周囲から私が見えないようにした。

「それよりドレスの件を伺いましょうか。宮田さんとは社長ですか?」

「え、あ、いえ、副社長です。今朝方、宮田工業のパーティーがあるので、香ちゃんにドレスを見繕って欲しいと依頼がありました。お二人でみえたのは、てっきりその為なのかと……」

「私が来なかったらどうするつもりだったの?」

「お電話をする予定でしたよ。ひょっとしてパーティーの話はご存じない?」

「えぇ、知らなかった。花森課長は?」

 これは話が出来過ぎ、仕組まれた流れと疑われても仕方ない。
 睨まれて課長は手帳をめくる。びっしり書き込まれたスケジュールを覗き込みつつ、袖を引っ張った。耳を貸して、との合図だ。

「ひどいじゃないですか、よくも騙してくれましたね。パーティーへ出席させる為、こんな手が込んだ真似を?」

「パーティーの開催は承知してますが、あなたを招待するとは知りませんでした。本当です。昨夜、副社長に連絡した際、思い付いたのでしょう。あの人ならやりかねません」

 一杯食わされたとばかり、襟足を撫でている。

「店長はドレスを売る気満々みたいですよ」

「売上に貢献するのはやぶさかではありませんが、せっかく購入するなら着て貰いたいです」

「嫌、パーティーなんて絶対に出ません」

 コソコソと話をする中、店長は次々とドレスを運んできた。