花森課長、もっと分かりやすく恋してくれませんか?

 私がいわゆる可愛い系の服を選ぶのは好きだというのは当然、お嬢様のイメージを保ちたい悪足掻きだ。日頃の行いを鑑み、レースやリボンで誤魔化せる態度じゃないのも自覚している。

 と、ここで思い出す。

「社内で異性の好みを言及した事が無い花森課長、実はカッコイイ系がお好きなんですか?」

 店長か商品を奥へ取りに向かうと尋ねてみた。課長は手を止め、傾げる。

「答えを聞いてどうするんです? 女子社員等に話題を提供するつもり?」

 店長と話す時は営業スマイルを浮かべ、声音も優しかったが、私相手だと抑揚がない。

「単なる好奇心、かな。課長を知りたいって思ったので質問しました」

「ーーえ? 私を知りたい? あなたが?」

「課長は私を色々と調べたみたいですし、私も課長を調べても構いませんよね」

 課長が見開く。何もそんなに驚く事はないでしょう、こちらが眉を顰めると慌てて表情を平らにした。

「ご自由に。痛くない腹を探られても平気です。ただし」

「ただし?」

「探偵ごっこは勤務外でお願いします。つまり自動的に同棲をすることとなり、パジャマが必要です」

 やけに同居に拘る。実際問題、明さんの家以外に身を寄せる場所はない。課長が作る料理は美味しい。無理やり抱こうとさえしてこなければ良い物件が目の前にある。

「この店で部屋着なんて買えません。値段、確認してみて下さい」

「……その返しは同棲を了承したと受け取りますよ? それなら部屋着だろうとドレスであろうと、あなたが欲しいだけ何着でも贈りましょう」

 素直じゃないオッケーのサインを見逃さない、課長。

「金庫番とは思えない台詞ですけど。あと同棲じゃなく同居です、同居」

 ふと脇から視線を感じ、振り向く。

「今、ドレスもって仰っしゃりましたよね? ちょうど良かった! 宮田さんから香ちゃんにドレスをお勧めするようお願いされていたの」