閉じかけていた目を擦りながらそろりと音を立てないよう立ち上がる。
微かに緑の香りとともに何処からか風が吹き抜けてきた。
どうやらこの家には小さな庭があるようで、少しだけ開いていた戸を見つけるとゆっくりと開ける。
姿を消していた人物はやはりそこにいた。
こちらに気付いてはいるだろうが、夜空を見上げたままの彼は昼間のように何か言ってくる様子もない。
「・・・眠れないのか」
返事はない。
まだ警戒されているのだろうか。
それとも一人でいることを好んでいるのか。
・・・いや、そもそもまともに戦うこともできないのに旅をしているような奴と話をする価値はないとでも思われているのか。
「・・・」
「・・・お前に言われたこと、全部その通りだよ。俺には誰かを守るほどの力はないし、あのまま村から出なければよかったのかもしれない」
俺の中にスペクルムが宿り、咄嗟に発言してしまったがためにルチルを巻き込んでしまった。
だけど・・・。
「俺には生まれた時の記憶がない。当時のことを教えてくれる人は誰もいなかった。
考えないようにすればするほど頭のどこかでずっと自分が何者であるのかを探してしまう。
旅の先にその答えがあるのかはわからないが・・・・・・まっ、今のところお前に言われた通り、偽善者なのかもしれないな」

