「それに、うたの役ってあのドラマじゃ視聴者に歓迎されないでしょう。ヒロインのライバルなんだから。これからもっと過激になっていくかもしれないんだから、今後は調べちゃだめよ」
「……そうですね」

 台本はまだ3話分までしかもらっていない。基本的には原作者ファンの期待を裏切らないようにと、台本も忠実に原作を沿っていくらしいけれど、そうなると南沢えなは、かなり嫌われていく一方だ。
 最終話まで乗り切れるだろうかという不安が一抹に過る。そんな中で、

「あ、そうそう。でも逆の声も結構上がってるみたいよ」

 バックミラー越しに夢さんと目が合い「逆?」とたずねる。

「うたの演技がうまいって」
「え……褒めてもらえてるんですか?」
「来栖凪や野木瑠璃奈に劣らないって。コアなファンもつきはじめてるみたい」

 悪い方にばかり繋がっていくと思っていた線に、別の線が加わってほっとする。

「そっか……よかった」

 話の中ではどれだけも邪魔者でいい。けれど、ドラマの評価で邪魔にだけはなりたくなかった。
 学園ドラマとはいえ、かなりの実力者揃いだと評判で。そこに、グラビア一本で仕事をしてきたわたしが、ぽんと、仲間に入ってしまったのだから、足枷だけになりたくないと思ったいたけれど、

「女の子のファンもあの1話で結構ついたみたいだからね。珍しいことなのよ? ヒロインのライバルにファンがつくって」
「そうですよね……」

 実際にあんな女の子がいたらいやでしょうがない。
 けれど、ああして邪魔になることでしか振り向いてもらえない気持ちも、わからなくはない。