テレビ画面に自分が映っているというのはなんとも不思議な光景だった。
 期待を十分に背負った第一話が、見事昨日全国のテレビに放送された。
 ドラマのタイトルは原作通り「りょうかたおもい」。

(いやしかし……わたし……すごい邪魔だなあ……)

 思わず自分の姿を見て苦笑がこぼれていく。
 南沢えなは、自分が思っている以上にかなりいらいらするものだなと、客観的に見て思っていた。
 実際、SNSには「南沢えな、まじでうざい」「えなって人、次回から消えてくれないかなー」などといった批判的なコメントが多くあがっていたのを見て肩を落としてしまった。
 この役を引き受けた時から、覚悟しなければいけなかったのだろうけれど、それでも心にくるものがある。見なければいいのに、見てしまうこの人間の欲というのは、なんなのだろうか。

「あ、もしかしてエゴサした?」

 早朝からの撮影で夢さんが運転する事務所の車に乗り込むと、なんとも一発で見破られてしまった。どうやら、鬱々としたオーラが消せなかったようだ。

「はい……調べたら寝れなくなっちゃって」
「だからあれだけ、するなって言ったのに」

 夢さんからは口酸っぱく「エゴサだけはするな」と言われていた。
 それをしばらくは守っていたのだ。調べないようにしようと心がけていたのに。

「すみません……ふと気になっちゃって」
「うたの場合は絶対しない方がいいの」
「どうしてですか……?」
「うたはほら、共感性が高いのよ。他人の感情でも、自分のように受け取っちゃうでしょう? エゴサするにしても、書かれてる通りに思い込んじゃうじゃない」
「たしかに……」

 的確な指摘に「すみません」と項垂れて謝ることしか出来ない。
 夢さんとの約束をやぶってまで、わざわざ心を八つ裂きにされにいかなくていいのにとわかっていたのに、それでも指がするすると動いてしまった。