「でも、隠すことに必死なればなるほど、俺が忘れられなくなるんだろうね」

 含みに笑ったその顔を、誰が知っているのだろう。
 この人のファンは、この人のこんな顔を知っているのだろうか。
 あんな嘘くさい演技なんて、偽りでしかなくて、ものすごく計算高いことなんて、ごくわずかな人間しか知らないはずだ。

「……いじわる」
「きみだけ」

 ほら、また、計算。
 計算されていると頭ではわかっているのに、はまっていく。その計算に囚われていく。

「俺のことだけ考えてれば?」

 ちゅっと、残された跡にキスを落とす姿は、まるで王子様なのに。綺麗な王子様でしかないのに。その傷跡を作ったのがこの人なんだから、危険だ。やっぱり危ない。――でも、離れらない。