21歳。今、いちばんモテる人かもしれない。

〝抱かれたい男ナンバーワン〟 殿堂入り
〝彼氏にしたいランキング一位〟 殿堂入り
〝友達にしたい男ベスト一位〟 殿堂入り

 この手のランキングは、毎年来栖凪が占領してしまうということもあり、ついには殿堂入りを果たしてしまった。
 そんな人がこの世界には存在するのだなと思うと、やはり来栖凪という存在はどこまでも遠い。

(あ……美容グッズ見に来たんだった)

 撮影の合間のわずかな休憩時間だということをすっかり忘れてしまった。
 来栖凪のことになると耳が敏感で困ってしまう。
 彼の声はすごく聞き取りやすくて濁りがない。すっきり耳に届いてくるから、その音が心地いいと感じてしまうのだと思う。

 ――そもそも、

 感動の再会ではないけれど、ひさしぶりに再会した直後までは、わたしにもまだ柔らかかった気がする。
 ギターを教えたときだって、爽やかで、語彙力が高くて、なにより落ちついた。

 だから、テレビの彼を見たときはほんとうに驚いてしまったんだ。

 天然だとか、お馬鹿だとか、そんなキャッチコピーがつけられている彼が信じられなくて、どうしてそんなキャラを演じているのか不思議だった。

 それが不思議だと思わなくなったのは、自分も芸能界に入り、グラビアをするようになってから。

 ――ああ、生き残っていくには、そういうキャラが必要だったんだ。

 そう気付いたとき、来栖凪が演じているキャラを納得したような気がする。

 わたしにつけられたものだって、〝現役JK 清純そうで本当はドエロな天使〟だった。

 男の心をくすぐるようなものだなって、どこか俯瞰して捉えたし、そうならなければいけないとも焦った。