来栖凪はズカズカと教室に入ってくる。
 ふわりと香水が漂う。私服がシンプルなのに、なんでこうもかっこいいのだろう。

 つい忘れてしまうけど、この人って年上だったんだ。
 ちゃんと成人してて大人、だけど。

「ほら、静かになれるとこいくぞ」
「えっちょっと!」

 見惚れていたら、手首をぐいっと掴まれ、そのまま教室を出ることに。
 けれど、廊下に出た直後。来栖凪は振り返って、

「俺がベタ惚れしてるから、だれも取らないでね」

 とんでもない爆弾をおいて、にこりを笑った。学校中の人たちの視線をかっさらうというオプションまでつけて。



「わたし、もう学校通えないよ……」

 撮影機材が持ち込まれた教室はだれもいなかった。

「大袈裟」
「大袈裟にもなるよ! ドッキリとかサプライズとか、連れ出すとか、どうなってるの」
「我慢できなかったんだからいいだろ」
「よくないよ。そもそも──」

 ちゅ、と軽く落とされた口づけに、一瞬時間が止まった気がした。
 綺麗な瞳と目が合って、油断すると吸い込まれそう……

「って、ここ学校!」
「こころって本当に現役の女子高生なんだな。興奮するわ」
「不謹慎!」
「今度はその制服で会おうぜ。可愛がってやる」
「可愛がらなくていいから……とにかく、このいやらしい手をどけて」
「なんで。おっぱいぐらい触るのはオッケーだし」
「オッケーじゃないよ!?」

 ……本当に、一難去ってまた一難。でも、それが幸せだったりする。
 うそつきのわたしたちが繰り広げたそれを、今は成功としてレポートにおさめたい。

fin