「あれは絶対、来栖凪が弱みを握られてるんだよ」
「わかる!じゃないと、あんなグラビアにわざわざいかないよね」

 久しぶりに学校に来てみれば、とんでもなく悪役に仕立て上げられていた。
 どこにでも、この仕事を貶す人は多いし、なにかにつけてグラビアがどうのと言われる。

 一難去ってまた一難。
 早く卒業でもしてしまえば気が楽になるのかもしれない。
 いっそ芸能学校に行ったほうが楽なのかもなぁ。

 机の中から教科書を出そうとすると、どんと机が大きく傾いた。
 通り過ぎっていった女の子たちが「ざまあみろ」とほくそ笑んでいる。

 ……気にしない、気にしない。

 ここでわたしが爆発したら、仕事にも影響が出るし、来栖凪にも迷惑をかけるかもしれない。
そうなるぐらいなら、わたしが我慢すればいいだけの話。

 ふう、と深呼吸を繰り返していると、廊下からとんでもない悲鳴が聞こえてきた。
 それは近づいてくるほどに、悲鳴ではなく歓喜に近いものだとわかって……

「あ、ここにいた」

 現れたのは、どこからどう見ても来栖凪で。
 変装すらしていないその状態はおどろく以外の何ものでもない。

「……な、んで」
「あれ、聞いてないんだ。この学校に取材入れてんの。ドッキリで学校サプライズ登校しましたぁってやつ」
「!?」

 聞いてない……!
 いつの間にそんなことなってたの?