「そうやってグラビアの質を落とすのやめてくれませんか? 嫌ならグラビアやめたらいいじゃないですか。本気でやってる人間を本気じゃない人に蹴落とされるの、本当に迷惑なんで」

 なにも、言えなかった。言い返すことも、否定するこも、出来なかった。
 佐原まなみのグラビアアイドルとしての本気が伝わってきたから。馬鹿にされてると感じてしまうその気持ちが痛いほどよく分かって、反論できる立場じゃなかった。
 グラビアの仕事に必死になればなるほど、表紙を飾れば飾るほど、だれかを蹴落としている。そのことを、わたしは分かっているようで分かっていなかったのかもしれない。
 わたしがいなければ輝けた人たちがいて、わたしが邪魔だから上にあがれない人がいる。
 イヤイヤ仕事している人間をみて腹を立てるのは正しい。わたしは確かに、グラビアの仕事は好きになれなかった。
 図星だったから、黙って彼女の言葉を受け止めるしかない──。

「──それって、負け犬の遠吠えってやつ?」

 そう、思っていたのに。
 まさかこの誰も入ってこれないような戦場に、野木瑠璃奈ちゃんが参入してくることは予想以外だった。

「……は?」

 佐原まなみの顔に怒りマークが見えた気がする。
 そんな彼女に、野木瑠璃奈ちゃんは臆することなく立ち向かっていく。