『ねえ、うた。わたしと初めて会ったときのこと、覚えてる?』

 夢さんとの出会いは、わたしがあの事務所と契約を結んですぐのことだった。

『あなた、本当はなにがやりたかったの?』

 それが夢さんの第一声で、あまりにも直球な質問に言葉が詰まってしまった。 
 え、とか、あ、とか。そんなのを繰り返して、結局出たのは答えではなく「どうしてですか?」だった。

『だって、全然やる気ないから。本当はグラビアなんかしたくないって、顔が言ってる』
『……』
『だから本当はなにがやりたいのか聞こうと思って』
 
 見透かれていた恥ずかしさが襲って、ぎゅっと拳に力を入れることしか出来なかったわたしに、夢さんは「大丈夫」と言った。

『大丈夫、誰にも言わないし。一応、あなたの野望だけでも聞いておきたいじゃない』
『野望、ですか?』
『そう、なにを思ってこの世界に入ってきたのか。志しているものはなにか。理由がない人なんていないのよ。まあ、なんとなく~とかで入ってくる人間もいるけど、あなたの場合はそうじゃない。なにかあるから、入ってきたんじゃないの?』

 夢さんの言葉はまっすぐで、奥に隠した夢なんて、すぐに引っ張り出されてしまって。

『……歌が、歌いたいです』

 ぼそぼそと出ていたその一言だって、夢さんは取りこぼすことなく拾い上げてくれた。