「あ、よかったら桜井さんもmeteorのツアー行きます?」
「え?! 行くって、そんな……チケットも取れないっていうし……」
「やだなあ。今回、ドラマの関係者お呼ばれしてるじゃないですか。わたしmeteorのコンサートは欠かさず行ってるんですよね。たのしいし、なによりナギがほんとうに輝いてるから。やっぱりお芝居してるときのナギとは違うんですよねえ。なんていうか、あそこに立ってるナギは、あそこに立つために生まれてきたんだろうなって本気で思うっていうか──あ、なんか語っちゃってすみません。気が緩みました」
へへ、と笑ってみせた彼女からは、純粋に好きだという感情が見えた気がして、すこしだけ驚いた。
(ふたりの熱愛報道はネットでよく見てたけど、双方が否定したことってなかったんだよね)
ただ噂されてるだけだと思っていたけど、もしかしたら野木瑠璃奈ちゃんにとって、あの噂は喜ばしいことだったのかもしれない。
「でも、ナギ大丈夫かなあ」
「大丈夫って?」
「ほら、ナギって膝やってるじゃないですか。今回の新曲だって──」
ほんとうに、知らないことが多すぎる、来栖凪のことは。
『あー……ちょっと、使いすぎたんですよね、膝。昔からダンスやってたんで、練習しすぎて。まあ、今はぜんぜん平気なんですけど』
meteoeの軌跡とつけられたドキュメンタリーを、その日家で見ていた。
野木瑠璃奈ちゃんが「ドキュメンタリーでも話してて」と言っていたのを聞いてしまったから、帰ってすぐに探してしまった。
けれど、ドキュメンタリーまで見てるということは驚きだ。よっぽど好きなのかもしれない。
番組は、今から三年前。まだ来栖凪と出会う前のころの話だ。
インタビューで答えていた来栖凪は、けろっとした顔でまた踊り続けていたが、その後リョウへと視点がかわり、リョウから見た来栖凪が語られる。