「あ、ナギ〜! 明日ドラマの番宣があるって聞いた?」

 その輪の中に、躊躇いもなくずかずかと入り込んでいったのがあの野木瑠璃奈ちゃん。
 気さくで天真爛漫。それでいて、圧倒的に来栖凪の隣がしっくりくる。
 まるでパズルのピースがはまってしまったようなその当てはまり方は、いつだって胸をざわつかせる。

「ねえ、やっぱほんとうなのかな」

 ちらばった女の子たちの集団の二人組が、わたしの近くで足を止めた。

「なにが?」「ほら、熱愛って」「あーナギくんと瑠璃奈ちゃんの?」「このまえもかなり話題になってたよね。実際、あのふたりだけで別っていうか」「空気感が違うよね。ナギくんも心許してるって感じするし」「わかる。やっぱ付き合ってんのかな」

 こそこそ話がしっかりと耳に入ってきてしまう。あのふたりはもともと囁かれてはいたけれど、実際こうして目の当たりにしても、あれは噂ではないんじゃないかと思ってしまうぐらいに親密度が高い気がする。

 ただただ気が合うのか。それとも、恋愛感情としてなのか。

 じっと見つめていれば、ふと、リョウの視線がこちらに向けられていることに気づいてはっとした。

 やばい、見つめすぎた。あの人には、なんだか勘ぐられているような気がしている。
 気をつけなければと、視線を外したところで「撮影はいりまーす」との声が室内に響いた。

 難を逃れたと、思っていたけれど。

「ねえ、ちょっといい?」

 撮影がおわり、一旦控室にと戻っていくその最中、リョウに捕まった。

「え……」
「話あるんだ」
「……あ、でも、話は」
「ナギのこと、って言ったら、話する時間つくる?」
「……っ」

 弱点をつかれているような気がして、沈んだ視線はなにも捉えることができず、曖昧に頷くことしかできなくて。

 じゃあ、こっちと言われた先は、なぜだか駐車場で。わざわざ履き替えてまで連れられた場所に不信感を抱いていれば「どういう関係?」と唐突に問われる。