いや、もしかしたら最初に私が助けたあのときにミーコはもう……。
なんて、わからないことを考えるのは不毛なことなのかもしれない。

尚美はこうして人間に戻って、ミーコはこつ然と姿を消した。
その信じがたいことが事実だった。

「これ、ありがとうございました。高いものを」
そう言って尚美がバッグから取り出したのは赤い首輪だった。

それを見た瞬間健一が目に涙をためて口を覆った。
「これは……」

「関さんが私の……ミーコのために買ってくれたものです。このネームプレート、お店で一番高いものでした」

健一は尚美から首輪を受け取ると、それを鼻先に近づけた。
「ミーコの匂いがする」

「私、ミーコでしたから」
そう言って少しだけ照れ笑いを浮かべた。