早めに病院へ行ってほしいと思うけれど、平日は忙しくて思うように動けないのが現状だった。

「それじゃ、行ってくるよ」
そんな声が聞こてきて尚美はすぐに玄関先へかけつけた。

そして健一の顔を見上げる。
今日は一段と顔色が悪い気がする。

青ざめて、目の下のクマもくっきりと見える。
「ミャアミャア」
今日くらいは休んで病院へ行ったらどう?

「どうした? 寂しいのか?」
健一が尚美を抱き上げて頭を撫でる。

いつもと同じなのに、どこか違和感のある香りが尚美の鼻腔をくすぐった。

なにかおかしい。

すぐに気がついたけれど、その時にはすでに床に降ろされていて、健一はそのまま会社へ行ってしまったのだった。