絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする

いつの間に眠ってしまったのか、「真下さん」と名前を呼ばれて目が覚めた。
ベッドの上で座る冬上さんと目が合った。

「起きられたんですね。良かった」

さっきまでよりも、だいぶ楽そうに見えてホッとして言うと、冬上さんが困ったような顔になった。

「ずっとついててくれたんだね。真下さんの貴重な時間を割かせてしまった」

常に人から頼られる存在の冬上さんにとって、いまの状況は受け入れ難いのかもしれない。だけど…。

「具合が悪い人を差し置いて、貴重な時間なんてないと思います」
「いや、でも」
「私は冬上さんに何かあったら、きっと一生後悔します。自分で出来るだけのことをしようって決めたんです。だからいま、こうして冬上さんと話せて良かったと思ってます」
「君は…」
「はい」
「いや。本当に助かったよ。ありがとう」

至近距離で私に向かって真っ直ぐな瞳をして笑顔を向けてきた冬上さんにドキリと胸騒ぎがした。

「あ…。じゃあ私はこれで失礼しますね。パックのお粥とか、ゼリー飲料とか直ぐに食べられるものはこの袋に入ってますし、冷凍庫にアイスも入れておいたので…」
「ちょっと待って」

立ちあがろうとした瞬間、冬上さんに腕を掴まれた。

「冬上さん?」
「いや。何でもない…。このお礼は後日改めてする」
「そんなこと気にしないでください。私だって冬上さんに助けて頂いたんですし、お互い様ですから」
「ーーー君がそこまで言うなら…。そういうことにしておくよ」
「はい。そうしてください。じゃあ私、帰ります。しっかり水分補給してくださいね」
「ああ。ありがとう。気をつけて」
「はい」

マンションを出て駅まで向かう。
どうしてかずっと、走ってもいないのに動悸がして鳴り止まなかった。