絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする

「冬上さん。着きましたよ」
「ああ…ありがとう」

この間、車で送ってもらって良かったなと心底思った。そうじゃなかったら、駐車場の位置すら分からなかった。

「降りられますか?」
「ああ。大丈夫。一人で歩ける…」
「じゃあ荷物持ちますね」

フラつきながらも、何とか冬上さんの部屋に着いた。冬上さんが鍵を開けて、一緒に中へ入る。靴を脱ぎ捨てた冬上さんは、そのまま勢いよくリビングまで行くと、ソファに倒れ込んだ。

「冬上さん。冬上さん」

体をゆすってみても、軽く頬を叩いても起きない。このままソファに寝ていたら体が休まらなくて、治るものだって治らなくなる。
勝手に見ることに罪悪感を覚えながら、いまは緊急事態だから、と自分に言い聞かせて寝室の場所を確認した。

「冬上さん、ごめんなさい。失礼します」

こんなとき、女子の中では身長が高いと言われ続けてきた自分に、良かったと思えた。ただでさえ寝ている人は重いのに身長の高い冬上さんはさらに動かすのが難しくて、両脇の下から手を入れて床を滑らせるように寝室まで運び、ベッドに何とか引き上げた。

問題はこのあとどうするか。
冬上さん一人で大丈夫かな。
だけど、私がこのままいるのは違う気がする。

冬上さんくらいの人なら、きっと彼女だっているはずだから、突然来たりとかしてくれないかな。そうしたら安心してバトンタッチをお願い出来るのに。

色々考えてみても結論は出せないまま、時間だけが過ぎてしまう。今ごろ家ではシロが不安で鳴いているかもしれない。

色々なことを考え過ぎて結局何も動けなくなって、一つも出来なかった。なんて最悪なパターンだけは避けたい。

まず落ち着いて。いま出来ることから一つずつこなしていくんだ。

ベッドに横にした冬上さんはまだスーツ姿のままで。体がリラックス出来ないはずだ。だって、家に帰ってからスーツを脱いだ時の開放感はすごいものがあるから。

緊急事態だからすみません。
後で文句も愚痴も罵倒だって全部受け止めますから…。

「冬上さん、スーツ、脱がせますよ」

寝ている冬上さんに断ってからスーツの上着を脱がせて、ネクタイを取った。それからワイシャツのボタンを上から3つ分だけ外した。