絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする

病院に着いた。気がつくと冬上さんは寝ていた。でも呼吸が早くて苦しそうだ。

夜間診療はものすごく混雑していた。車に冬上さんを残して受付に行き発熱しているかもしれないと伝えると、問診票と体温計を渡された。

「冬上さん。病院ですよ。熱を測りますね」
「うん。ああ…。頼む」

熱が高くて苦しんでるんだから当たり前だけど、一切隙を見せない冬上さんはどこにもいなくて。よく考えてみると、そういう冬上さんの顔ばかり見ている気がする。仕事の時の冬上さんより人間味が溢れていて、そういう冬上さんの方がずっと魅力的だと思う。


体温計が示す数字に、思わず「えっ」と大きな声を出してしまった。
39.8℃。きついなんて言葉で済ませるレベルじゃない。

「すみません。40度近くあるんです。すごく苦しんでいて…」
「わかりました。でも落ち着いてください。お話は出来る状態ですか?」
「はい。何とか」
「水分は摂れていますか?」
「あっ…いえ。まだ…」
「先にお待ちの患者様がたくさんいますので…。順番にお呼びしますので、水分を摂りながらお待ちください」
「わかりました」


車に戻る前に自販機でペットボトルを買った。あんな状態で飲めるかが心配だ。寝息をたてている冬上さんを、本当は寝かしておいてあげたい気持ちを抑えて声をかけた。

「冬上さん。水分買ってきました。熱が高いので飲まないとまずいって看護師さんが」
「ああ…うん…」
「シート起こしますね」

一旦外に出て、助手席のドアを開けて下げていたシートを起こした。

「悪いな…君に…迷惑かけて…」

ペットボトルに口をつけながら、申し訳なさそうに冬上さんが言った。病は気からって言うけど、いまの冬上さんを見ていると本当にそうだなと思う。
気持ちがすごく弱っているんだ。


「迷惑なんかじゃないですよ。私だって冬上さんに助けて頂いたばかりですし。困った時はみんなお互い様ですし。頼ってもいいんじゃないでしょうか」
「意外だな…」
「え?」
「いや…。君は…あまり人に頼りたくない人なのかと…思ってたんだ…俺に…近い…」
「冬上さん?」