車に乗り込んだ瞬間、冬上さんは座席に倒れ込んだ。額には汗が滲んでいて、どう見ても辛そうだ。
冬上さんの自宅はナビに設定されていた。だけどこのまま自宅へ帰していいのか悩む。一人で過ごして冬上さんに何かあったらと考えると…。
悪い想像ばかりしてしまう。
だけど、とりあえずは駐車場から車を出さないといけない。誰かに見られでもして変な誤解をされたりしたら困る。本当のことを話せばいいんだろうけど、今日一日、具合悪いことを隠し通して仕事をした冬上さんの頑張りを無駄にしてしまう気がする。
とりあえず車を走らせてから道路脇に停めて、スマホで夜間診療をしてくれる病院を探すと近くに何軒かあった。
「冬上さん」
「ーーーああ」
「今から夜間診療の病院に行ってもいいですか」
「いや。俺は自宅に…」
「熱って言っても、ただの風邪じゃない場合だってあります。もし酷くなったらその方が大変です。私は病院でちゃんと診てもらう方がいいと思います」
前にニュース番組で観たことがある。ただの風邪だと思って自宅で療養していたら、死に至る感染症だったって。油断は禁物なんだから。
「俺が行かないって言っても…、連れていかれそうだな」
「そうですね。連れて行きます」
「だったら抵抗しても無駄だな。俺は無駄が嫌いでね。任せるよ、君に」
「ありがとうございます…」
病院に着くまでの間、冬上さんも私も一言も話さなかった。
