絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする

部署を移ったばかりの私が、冬上さんと息が合ってるなんて口が裂けても言えない。冬上さんは常に仕事のことを考えてるし、そこに繋がる勉強も怠らない。私なんて程遠い。

「そう?結構いいコンビだと思うけどな。それに冬上くん。真下さんには壁が低い気がするの」
「壁が…ですか」
「表情とか言い方とか、本当にちょっとしたことなんだけどね。私以外にも言ってる人いるわよ。だから…真下さんを連れてきたのは冬上さんのご指名だなんて妬む人もいるみたいだから。ーーーそこは少し気をつけた方がいいかもね」

伊藤さんが今日ランチに誘ってくれた理由はきっと、これだったんだ。何となくそう思った。冬上さんと組めば否応無く注目される。そして根拠のない噂や妬みを買うこともあるのかもしれない。歴代の冬上さんと組んできた人たちも、きっと大変だったんだろう。


「真下さん。KP社の割田課長に連絡してくれた?」
席に戻るなり、冬上さんの声が飛んできた。冬上さん、昼食は今日もパンとコーヒーだけなんだろうか。
「連絡済みです。修正版価格表も送ってあります。検討して冬上さんに折り返すとのことです」
「回答期限は」
「明日の昼までです。あの、報告したはずですが」
「そうだったか?悪い」
「いえ…」

冬上さんが報告したことを忘れるなんて珍しい。いつも一切隙を見せない人なのに。

担当が私に変わって、私の知らないところで冬上さんがフォローしてくれている部分が幾つかあることには気づいていた。ただでさえ忙しい冬上さんに、私が負担をかけてしまっているんだとしたら…。私は重荷にはなりたくない。

その後も冬上さんは取引先へ出かけたり、帰社しても淡々と仕事をしていたけど、私への指示が遅れたり、いつもとはやっぱり様子が違っていた。

取引先へ電話をするときも話をしながら考えこんだり、誰かと話すときも顔をしかめたりしていた。

「冬上さん。もしかして体調が良くないですか?」

退勤時間を過ぎて人が少なくなったのを見計らって、自販機に向かう冬上さんに後ろから声を掛けた。