絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする

リビングにあるソファで目の前でコーヒーを飲む冬上さんは、私が前にいようと大して気にもならない様子で、人間としての器の違いをまざまざと見せられてる気さえする。

でも当然か。人に注目されることを常とする人と、人に見られることなんて滅多にない人間。その差は歴然だ。

「どうして私がいきなり部屋に呼ばれたの?って顔してるね」

ソーサーにカップを置いた音はとても小さいはずなのに、かちゃりと大きく聞こえた。

「そうですね。会社の人たちに知られたら、無事では済まないと思います。特に女性陣ですけど…」

私のなかにはもう、絶対零度と言われる冬上さんの姿は微塵もなくて、普通に本音が言える。何を言っても受け止めたり、サラッと流したりしてくれそうだ。

「確かに。会社の人間でこの部屋に来たのは、真下さんが初めてだな。それで君を誘った理由だけど…。ちょっと待ってて」

そう言うと、冬上さんは立ち上がり部屋を出て行ってしまった。広い部屋にぽつんと一人残された。これだけ広いスペースに一人だと、何となく落ち着かない。やっぱり私には、六畳くらいの空間が居心地よく感じる。

数分後、扉が開いて冬上さんが戻ってきた。

「君にこいつを見せたかったんだ」

そう言った冬上さんは、腕の中に白い犬を抱いている。可愛らしいその顔には、見覚えがある。

ーーーあの犬だ。