絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする

「奇遇だね」

「冬上さん…本当ですね」

知らなかったフリをするのって結構難しいんだ。顔が見えないよう配慮されているのに、どうして私だってわかったんだろう。

「よく分かりましたね」
「トイレに行くのに後ろを通ったからね。今日半日以上も一緒にいたんだ。真下さんの服装だってすぐ気がついた」
「そうなんですね。私、ここへはよく来るんです」
「落ち着く場所だからね。分かるよ。俺も時々来てるんだ」

やっぱり私の勘は当たっていた。もしかして冬上さんくらいになると、気軽にご飯に誘ったりとかが、かえって出来ないのかもしれない。社内の人たちじゃ、きっとみんな冬上さんに誘われたら、緊張するはずだ。

そう考えると、生まれながらにして恵まれた環境に思えるけど、逆に私みたいな人間の方がずっとずっと気楽に生きられる気もする。