絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする

「あの…冬上さん。良かったら、これを」

少しは渋滞待ちの気分が紛れるかもしれないと思って、いつも鞄に入っている飴を差し出すと、冬上さんが飴をジッと見つめたまま止まってしまった。

「あの、何か…。あ、もしかして嫌いでしたか?だったら他にもありますよ。私喉が弱くて、いつも色々な飴を持ち歩いているんです」

小さな頃から喉が弱くて、乾燥した空気にかなり敏感で直ぐ喉にきて咳が止まらなくなる。だから色々な飴を常にポーチに入れて携帯している。

「いや。嫌いじゃない。少し…懐かしいと思ってね」
「この飴がですか?」
「昔からある飴だろ」
「そうですね。確かに、この飴をあげた人にはよく言われます。昔、おばあちゃん家によくあったとか食べたとか」
「確かにそうだな。ーーーありがたく、頂くよ」

そう言って笑った冬上さんが飴の包みを開けて口に入れた。ただそれだけなのに、どうしてか私は目を逸らすことが出来なかった。

「真下さんは何か動物を飼っている?」

口の中で飴を転がしながら中々解消されない渋滞の列を見つめていると、冬上さんに聞かれた。動物と冬上さんて、どことなくイメージしづらいけど、強面の人が動物好きだったりするから人はわからない。

「本当は犬を飼いたいんですけど、一人暮らしですし、寂しい思いをさせてしまうと思うので…」
「なるほどな。確かにそうだな。それで命懸けで助けようとした?」
「はい?」
「無謀にも程がある。あと一歩だ。俺の手が君に届かなかったら、君は死んでいたはずだ」