インフィニティでは、担当者だけでなく常務取締役まで同席した。冬上さんはいづれ会社を継ぐ人間だから、長い付き合いになる、というような話を笑顔で何度も話していた。
私は担当者の三枝さんと話していたけれど、常務の声は大きくて聞く気はなくても全部の話を聞いてしまった。それで冬上さんが、どこからのお見合い話も断っていて、色々な会社の社長さんが自分の娘を嫁がせようと躍起になっていることも知った。
三枝さんはとても人当たりの良い人で、事情がまだよくわからない私に話が分かるように、難しい話も噛み砕いてしてくれた。
「初対面としては上出来だな」
インフィニティを出て駐車場へ向かう道すがら冬上さんに言われた。少しだけ表情が柔らかい気がする。まさか褒めてもらえるとは思ってもみなかった。
「そうだったら良いんですけど。三枝さんにほとんど会話をリードしていただけたからだと思います。私はただ聞いてる感じだったので」
「それが良かったって言ってるんだ」
「え?それはどういう…」
「三枝さんは無類の話し好きだ。人と話すときは常にリードを取りたがる。だから今日は終始ご機嫌だったんじゃないか」
確かに三枝さんはずっと上機嫌だった。でもそれは常務取締役もいたし、冬上さんがいたからで、私は関係ないと思ってた。
「真下さんは聞き上手なんだな。会話に於いて一番大切なのは、相手の話を真摯に聞けることだ。君にはそれが備わっている」
話すのが上手くないことを自覚する場面はこれまで何度もあった。
歓送迎会なんかで話を振られても、私が話出すと急に周りの空気が残念な感じになってしまう。
多分、日頃から一人で過ごすことが当たり前になってしまっていて、話すスキルが著しく低いんだ。
だからせめて、人の話を聞くことくらいはちゃんとしたいって思ってきた。
そのことを認めてもらえたみたいで、すごく嬉しい。
絶対零度。遠くから冬上さんを見ていた時には、その言葉がぴったりだと思っていた。だけど彼の近くにいると、それは違うんじゃないかって思えてくる。
「そういえば昼休み前に連れ出したから、真下さんもまだ食事取れてないよな」
車に乗り込みながら言われて気がついた。そういえば緊張していてそれどころじゃなかったけど、お昼まだだったんだ。自覚したら急にお腹が空いてきた。
「そうでしたね。忘れてました」
「何か食べて行くか。アレルギーはある?」
「いえ。特には」
「嫌いなもの、食べられないものは」
「それも特には…。あ、でも強いて言えばアボカドが苦手かもしれません」
「アボカドか。わかった」
私は担当者の三枝さんと話していたけれど、常務の声は大きくて聞く気はなくても全部の話を聞いてしまった。それで冬上さんが、どこからのお見合い話も断っていて、色々な会社の社長さんが自分の娘を嫁がせようと躍起になっていることも知った。
三枝さんはとても人当たりの良い人で、事情がまだよくわからない私に話が分かるように、難しい話も噛み砕いてしてくれた。
「初対面としては上出来だな」
インフィニティを出て駐車場へ向かう道すがら冬上さんに言われた。少しだけ表情が柔らかい気がする。まさか褒めてもらえるとは思ってもみなかった。
「そうだったら良いんですけど。三枝さんにほとんど会話をリードしていただけたからだと思います。私はただ聞いてる感じだったので」
「それが良かったって言ってるんだ」
「え?それはどういう…」
「三枝さんは無類の話し好きだ。人と話すときは常にリードを取りたがる。だから今日は終始ご機嫌だったんじゃないか」
確かに三枝さんはずっと上機嫌だった。でもそれは常務取締役もいたし、冬上さんがいたからで、私は関係ないと思ってた。
「真下さんは聞き上手なんだな。会話に於いて一番大切なのは、相手の話を真摯に聞けることだ。君にはそれが備わっている」
話すのが上手くないことを自覚する場面はこれまで何度もあった。
歓送迎会なんかで話を振られても、私が話出すと急に周りの空気が残念な感じになってしまう。
多分、日頃から一人で過ごすことが当たり前になってしまっていて、話すスキルが著しく低いんだ。
だからせめて、人の話を聞くことくらいはちゃんとしたいって思ってきた。
そのことを認めてもらえたみたいで、すごく嬉しい。
絶対零度。遠くから冬上さんを見ていた時には、その言葉がぴったりだと思っていた。だけど彼の近くにいると、それは違うんじゃないかって思えてくる。
「そういえば昼休み前に連れ出したから、真下さんもまだ食事取れてないよな」
車に乗り込みながら言われて気がついた。そういえば緊張していてそれどころじゃなかったけど、お昼まだだったんだ。自覚したら急にお腹が空いてきた。
「そうでしたね。忘れてました」
「何か食べて行くか。アレルギーはある?」
「いえ。特には」
「嫌いなもの、食べられないものは」
「それも特には…。あ、でも強いて言えばアボカドが苦手かもしれません」
「アボカドか。わかった」
