絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする

復帰明けは忙しいかと思っていたけど、土日を挟んでいたおかげで最低限の休みで済んだせいかそうでもなかった。

引き継ぎに関しても全てがデータ化しているし、そこまで時間はかからなそうだ。

社員の経費精算と仮払金の処理をしていると、静かだったフロアが急に騒がしくなった。何かと思って入り口の方を見ると、冬上さんがいた。そこに立っているだけで周りの空気が引き締まった感じがする。所属は違うけど、社長子息だから上司たちも腰が低くなっているのがわかる。

冬上さんがこちらに向かって歩いてくる。やっぱり私のところに来たんだ。

「真下さん。ちょっと時間あるかな。部長からは連れ出していいって許可はもらってるから」

言い方は柔らかい感じだけど、拒否権が私には全くないのがよく分かる。

フロア全体が仕事をしながらも、視線がこちらに向けられているのを感じながら、私は冬上さんの後を歩いた。

てっきり営業部フロアに行くのかと思っていたら、冬上さんが駐車場に停めていた車に乗せられた。

「あの…、冬上さん」
「何?」
「どちらへ行かれるのかお聞きしてもいいでしょうか」

冬上さんの運転はスムーズで、乗る人を不快にさせない。社長子息で、外見も良くて頭も良くて。おまけに運転まで上手なんて、どうすればこんな恵まれた人間になれるんだろう。