六月は本当に平凡だった。
気付けば雨のあの日から一ヶ月が経過していて、六月の出来事なんてほとんど覚えていない。
そういえば、まだ桔梗にお弁当を作ってない。
期末テストが終わって時間に余裕があるから、七月に入ったら作ってあげよう。

毎日欠かさずに放課後社会科資料室に行ってはノートとにらめっこをし、桔梗と帰宅する毎日。
ときどき朝も桔梗が家まで迎えにきてくれて、いつのまにか私たちはカップルのように扱われていた。

「クラス替えから三ヶ月で彼氏か。羨ましいなあ」

そうやって後ろから抱きついてくる莉里は完全に勘違いしている。
わざわざ説明するようなことでもないので桔梗の話になるたびに「付き合ってないよ〜」とだけ言っている。
信じてもらえてないというのも承諾済みだ。

「恥ずかしがることじゃないからね!本当はもう付き合って一ヶ月以上経ってるでしょ」

莉里の言葉に、もう六月も終わりか、としんみりしてしまう。
六月は本当に早かった。

私の心が明るかったからかな。

雨の記憶はほとんどなくて、雨の暗さに自分の心が引っ張られていなかったことに安心した。

雨は好きだけど、気分は沈む。
最近は晴れる日が増えてきた。
代わりに日光が強く注ぎ、日焼け止めがかかせない季節へと向かっていた。

高校二年の、夏が来る。