ゴールデンウィークが終わる頃には桔梗の腕の包帯も取れていた。
なんとなく細くなったようにも感じるが、骨折前の桔梗をあまり見ていないのでよくわからない。
最近は桔梗ファン女子たちが、桔梗が私と仲が良いという情報を聞いて教室を覗きに来る。
桔梗が女子と関わるのはそんなにイレギュラーなことなのだろうか。
どちらかというと私が男子と関わることの方が珍しいような気がする。

「葛西くん、今日の放課後空いてない?」

「週末どっか行こうよ」

そんな誘いが休み時間になると桔梗を囲う。

「無理」

「邪魔」

桔梗はいつもそんな冷たい言葉でばっさり切ってしまっている。
なんで牡丹はいいのよ、と不満げな女子たちは休み時間がやってくるたび教室に来る。
どうせ文句を言うなら来なければいいのに。

体育などの合同授業は特にうるさい。

今日から陸上が始まる。
一部の女子たちで男子のサッカーが見やすい位置での練習の取り合いになっていた。
桔梗だけの話ではないだろうが、女子というものは不思議だな、と思ってしまった。
体育の時間に男の子が見えるか見えないかだけでこんなに言い合いになるなんて、と正直信じられない。
人のタイプなんてそれぞれだけど、モテる人はだいたい誰から見てもモテそうに見えるものじゃないのか。
少なくとも桔梗はモテるというほど優しくはない。
金髪にピアスのような外見が好きなのはまだ理解できるが、性格重視と言いつつそんなに重視していない気がした。

「おい桔梗。女子たち群がってんぞ」

男子たちからのそんなからかいも桔梗は雑に流すだけで、全く興味がなさそうだった。
そう言えば体弱いって言ってたよな、と思ってちょっとだけ桔梗を気にしていた。
骨折も治ったばかりだし、また怪我されたくない。
私がちょっと気にするだけで女子にも睨まれてしまう。私じゃなくて桔梗を見る方が効率がいいと思うが、中々そうはいかないらしい。
いつになっても彼女たちの思考を理解できない自信があった。