The previous night of the world revolution8~F.D.~

普段は強がってて、飄々として、余裕綽々で。

強く、明るく振る舞っているけれど。

本当のルレイアは、驚くほど繊細で、誰よりも傷つきやすいということを、俺は知っている。

そんなルレイアの弱さを、俺は受け入れる。受け入れて、そして支える。

それが、相棒である俺の役目だ。

「今回、あの三人はあくまで俺だけを標的にしていた。でも、復讐の矛先が、もし俺以外にも…『青薔薇連合会』の仲間達に向いていたら?」

「…それは…」

「自分が殺されるのは構わない。でも、アイズやアリューシャやシュノさんや、ルリシヤやルーチェスが狙われたら?…俺じゃなくて…俺の大切な人が…」

ルレイアは、ひと呼吸置いて言った。

「…ルルシーが、殺されてしまったら」

「…ルレイア…」

「俺は一生自分を許せないでしょう」

そうかもな。

分かるよ、その気持ちは。…逆の立場だったら、絶対同じことを思うだろうから。

「三人分の復讐心が束になっても、まだ俺一人の闇に敵わない…。自分が恐ろしいです。一体、何処まで業が深くなるのか…」

「…」

「自分で自分が分からなくなりそうで…。…怖いですね」

ルレイアは、不安に思ってるんだろうけど。

心なしか、俺は嬉しかった。

そういう弱さを、俺に見せてくれることが。

俺だけで良い。俺だけで良いから…。

…どうかいつまでも、自分の弱さを見せてくれ。

いつだって、俺はそんなお前を全部受け入れるから。

「…大丈夫だ。ルレイア」

俺は、しっかりとルレイアの震える手を握った。

「お前が自分のことを分からなくなったって、俺はお前のことを分かってる。お前はルレイアだ。それ以外の誰でもない」

「…ルルシー」

ようやく顔を上げたルレイアは、不安げな表情だった。

その顔は、まだルシファーだった頃と変わらないように見えた。

「何があっても、俺はお前の隣に居る。地獄にだって喜んで一緒に行くよ。だから…何も恐れるな。俺達はずっと一緒だ。これまでも…これからも、永遠に」

「…えぇ。信じますよ、ルルシー」

ルレイアもまた、俺の手を握り返した。

「あなたはいつだってそうだった…。最初に出会った頃からずっと…。俺を暗闇から救い出してくれる、一筋の光だった」

「…大袈裟だよ」

「そんなことありません。あなたが居るから、俺は生きてこられたんですよ」

…それはこっちの台詞だよ。

「さぁ、帰りましょうか。俺達の家…『青薔薇連合会』に」

「あぁ」

しっかりと、お互いの手を取って。

…復讐者の返り血に濡れた、ルレイアの手を取って。

俺達は、帰るべき場所に歩き出した。